image

「OKINAWA SOBA EIBUN」店長の中村栄文さん(左)とスタッフの横山実沙さん=15日、那覇市壺屋

 

沖縄そばを世界に広めたい-。沖縄県那覇市壺屋で「OKINAWA SOBA EIBUN」を営む中村栄文さん(38)は5年前、沖縄そばの将来性に引かれて沖縄に移住した。今年4月にがんが発覚し、現在闘病中だが「沖縄そばと心中する気持ち」で沖縄そば専門店の海外進出を目指し、試行錯誤の日々を送っている。

 

岩手県出身の中村さん。19歳でフランス料理を学ぶために上京し、料理人やアパレルなどを経験した。サラリーマン時代に赴任先の東南アジアで日本食の良さに気付いたことをきっかけに「海外で発信する側になりたい」と再度、飲食業に進むことを決めた。

 

シンガポールで飲食チェーン店の料理人の職を得て、「当分、日本に帰らない」との思いで、2011年、ビザの取得のため地元・岩手に一時帰国。その滞在中に東日本大震災に襲われた。住んでいた街の半分以上がなくなった。

 

「海外に行っている場合じゃない」。シンガポールでの仕事を辞めて、町おこしのボランティア活動に従事した。

 

沖縄そばの存在を知ったのは、ちょうどその頃だ。友人の妻から「専門店が100以上ある」「地域や店によって味や麺に違いがある」などの話を聞き、ぴんと来た。「この食でなら海外で勝負できる」。沖縄そばで海外を目指そうと決心した。

 

沖縄に移住してから、本島北部や那覇市内のそば屋で修業を積み、2016年に開店した。しかし、開店準備期間から体調がすぐれず、今年4月に悪性リンパ腫と診断された。「地元に帰ろうとも考えた。でも、どうせなら試練と思って最後までそばを作ってやろうと思った」

 

5月からは抗がん剤治療を始めた。治療に踏み切る前、副作用を懸念し「1回死んだ」と区切りを付けた。今は2回目の人生。「日本の麺文化で唯一、未開拓なのが沖縄そば。可能性を追求して、海外でも通用するものを作りたい」と熱い思いを胸に、今日も店に立つ。(仲吉輝)