アジア主要3都市公演や国内ドームツアーなど、9月の引退を控えラストイヤーを駆け抜ける歌手の安室奈美恵さん。多忙を極める中、沖縄県庁で開催された県民栄誉賞表彰式に姿を現した。式では感極まり涙をぬぐうなど、受賞に特別な思いを抱いている様子を見せた。14歳で沖縄から全国デビューし、ファッションや生き方など人々に大きな影響を与えてきた25年間。「いつも帰ってくるたびに初心に戻してくれる場所。一人でも多くの人に好きになってもらえるといい」とふるさと沖縄への思いを語った。
「厳しい日程ということで、直接、お会いできるか心配していた」。アジアツアー最終地の台北から極秘に沖縄入りしたという安室さんを、翁長雄志知事は安堵(あんど)の笑みで迎えた。首元からの黒いボウタイにベージュ色のブラウスとスカートの装い安室さんは、県幹部や報道記者が見守る中で表情に硬さも見られ、会場は静粛な空気に包まれた。
翁長知事が、全国を席巻した「アムラー」現象や、安室さんが草分けとなって県出身の数多くの歌手やタレントが後に続いたことに触れ、「街中で安室さんの歌が流れ、家に帰っても娘たちがテレビの中の安室さんと一緒に踊っていた」と当時を振り返ると、安室さんは次第にうつむきがちになり、繰り返し目頭を押さえた。メークの付き人にティッシュを差し出され、照れ笑いを浮かべながらもあふれる涙をこらえきれなかった。
謝辞を述べる際は赤くなった目でしっかりと前を見詰めたが、「名誉ある賞をいただき……」と語りすぐに言葉を詰まらせた。「本当にうれしく思っています。ありがとうございました」と声を振り絞り、集まった出席者に深々と頭を下げた。授賞後の懇談に入ると「すごく緊張してしまって」とほてりを冷やすように手で顔をあおぎ、ようやく笑顔を見せた。
翁長知事は、2000年の九州・沖縄サミットでイメージソング「NEVER END」を披露する大役を果たしたことに触れ「若いにも関わらず、全世界の首脳がたくさんいる中で沖縄の思いを出してくれた。舞台のすぐ下で拝見し、感激したのを鮮明に覚えている」と語った。これに対し安室さんは「何かお手伝いできることといえば、やっぱり歌を歌うことだった。あの場所で歌わせてもらえてうれしかった」と振り返った。