「私の中で仕事にオンオフがなく、ライフスタイルの一環」と語るビバーチェビューティーオーナー兼エステティシャンの伊是名佑有里さん(49歳)。置かれた環境からチャンスを広げ、夢を叶えた女性経営者の素顔に迫りました。
◇記事:朱瞳碧晃(ビューティーライター、フォトグラファー)
人生を変えた出来事は?
美容の世界に入るきっかけになったのは、化粧品店を営んでいた母の影響です。お客様の相談にのって励ましたり、応援したりしながら接客する姿がかっこよく、こういう仕事がしたいと思うようになりました。20代は好奇心旺盛で、朝早くから深夜まで、美容、アパレル、ジャズバーの仕事を掛け持ち。睡眠時間4時間の生活を7~8年続けていた頃、ハードスケジュールを楽しんでいる姿を評価され、リゾートホテルのスパの立ち上げに協力してくれないかと誘われたんです。チャンスはどこに転がっているかわからないですね。
その後、ホテルスパ開業に向けての研修先で出逢った先生の影響で、自分の将来を真剣に考え、美容の道一本に絞ろうと決意。その恩師は、「美容の仕事は、ライフスタイルも含めて全部、人の手本となるべき」という教えで、決して厳しい訳ではなく、多くを語らず、背中を見せて学ばせるというスタンス。こういう大人っていいなという憧れの存在として、エステティシャンとしてのお手本になりました。それからの2年間は、エステ以外のことでは外出せず、遊びにも行かず、エステの道を究めることに集中。国際ライセンス修得し、生涯の道が決まりました。
今、振り返ってみても、若い時、好きな事を見つけるまで、とことん必死で働いた事が、肉体的にも精神的にも鍛えられ、良い経験になりました。 そして、チャンスにつながった。 また、辛く苦しい時、周りの人に支えられ、応援してもらい、そのお陰で 逃げださず、一歩、一歩、前進し、最善を尽くすことができた。集団の苦手だった私が指導者として奮闘してこれたのも、甘やかさず厳しいながらもサポートしてくださった方々がいたからだと感謝しています。「正しい」という字は一か所に止まると書く。苦しい時、逃げたい時、一か所に留まって全力を尽くすことが大切だと言い聞かせてきました。どんな仕事でも、基礎や土台づくりが肝心で、成功の道は、全て、地味な事をコツコツと積み重ねていくことだったと感じています。 そして、恩を忘れず、 人の優しさにきちんと応えていく生き方をこれから先もしていきたいですね。
ハッピーでいるためにしていることは?
沖縄や東京での仕事中は全て室内なので、休みの日は、友達や家族を誘って、伊江島や久高島へ出掛けるのも癒しの時間です。自然の中に身を置き、気持ちのリフレッシュを楽しむようにしています。
毎年恒例の吉方位旅行も楽しみの一つ。年に一度、自分にとって運気の上がる月に運気の上がる場所へ旅行に行きます。私は、ケアで人の体に触るので、私自身がいつでも運気が良く、ハッピーな状態でいたい。私が弱っていたらいいケアが出来ないので、いつもニュートラルな状態を保つように心掛けています。自分の状態を整えるのが趣味みたいなもの(笑)。自分自身もハッピーな状態でいることが仕事につながっています。
座右の銘は?
「心配するな、安心するな」
尊敬する兄のような先輩から教わった言葉です。 お客様に接する際、 決して不安を与えてはいけない。常にどっしりと構えた姿勢で心配な空気や気配を出してはならない。 しかし、仕事に慣れてきた時こそ、奢らず、常に謙虚にお客様の気持ちに寄り添う人であれ。そう心にとめている言葉です。
仕事で大切にしていることは?
体に触れる仕事に終わりはなく、一生勉強。私のトリートメントケアは、琉球舞踊の所作を取り入れ、古典音楽に合わせて、体を緩めて 巡りをよくする「クシャティ」といい、伝統的なものを守りながら、常に新しいものも吸収し進化しています。お客様も年を重ねるにつれ体が変わってきて、新しいケアが必要になったので、尊敬する理学療法士の先生を招いた勉強会を行い、整体を取り入れたオイルマッサージも始めました。他にも、神経や筋肉、骨格など解剖学、皮膚生理学などの座学も行います。 勉強会は、仕事が終わってから深夜まで続きますが、刺激的で、とても新鮮です!
基礎は大事なので、ビバーチェはスタッフ全員が国際ライセンス保持者であり、ホテルサロンの経験者です。自ら考えて行動出来る自由な社風でも秩序が保たれているのは、ルールの世界を経験し、自由の大変さも分かっているから。すべて自由なのは自己責任なので、実は簡単なようで難しい。規律がある経験をしたからこそ、自由な環境でいきる。基礎があり、組織の中で経験を積んだからこそ、個になった時にしっかり出来るのだと思います。こうじゃなきゃ出来ないではなく、何もない所で仕事をしてと言われても順応出来るのがプロだと思います。
理想の女性像は?
憧れの女性は自然体で、うまく力が抜けている人。ファッションで理想的なのは、CHANELスタイリストだったリンダ・ロディン。デニムが似合う彼女の崩した着こなしが好きで、ブラックをオシャレに着こなせる彼女が目標。70代で真っ黒な服を着ても喪服に見えないかっこよさは素敵。自然なグレイヘアに、真紅の口紅。カジュアルな服がやぼったくならない体形を維持する彼女は憧れです。
理想のパートナー、好きな人のタイプは?
17歳の頃から付き合い、そのまま結婚した主人は、自分の価値観が出来上がる前から一緒にいるから、1番、楽。 今では、夫婦というより同志。 相手に依存せずに、 自立し、価値観を押し付けず、共有しない関係が心地良いです。
30年近く一緒にいても、お互い異性という意識を忘れず、新鮮な関係でいたいので、あえて外で待ち合わせてデート、そして現地解散(笑)。まるで付き合っているカップルのようなスタイルが自然と定着しました。共に感覚が10代の頃から変わらず、ファッションに関心があって、意見も合うので、洋服も一緒に見に行きます。彼は仕事のプロ意識があれば、美容に対して手を抜いてほしくないと、スーパーでのお買い物やゴミ捨てにさえノーメイクで外へ出るのを嫌がるんです。常に説得力のあるエステティシャンでいるべきと、時々口うるさく、少し太った?とか言われますが、その甲斐あって、なんとか体型も保てていますし、私に関心がある証拠だと思えば感謝しなくては(笑)。
お互い本当に自由人な二人。一人の時間が好きで、自分の好きなことに没頭する二人ですが、自立しているからこそ自分の価値観を押し付けず、歩み寄る部分もあり、距離感のバランスが絶妙なのがいいのかもしれません。自由を尊重できるって自分に自信がついた証かな? 好きな人が自由人だと、歳を重ねてようやく言えるようになりました。
落ち込んだ時の対処法は?
とにかく落ち込む事が大の苦手。だから、落ち込みそうになった時の心の準備というか、心構えは常にもっています。落ち込まないよう、常に悔いの残らないように努めつつ、日々を大事に生きるように意識しています。そして出来る限り、好きな人には会える時に会っておきます。全ての行動は、「先手、根回し!」万が一、落ち込んだ時は、とにかく何も考えず寝ることです。
チャレンジしたいことは?
16年前に拾った野良犬で、今ではビバーチェの看板犬になった成り上がり犬Yahoo(ヤフー)が長寿を全うできるよう健康管理に気をつけ、将来、犬生(愛犬の生涯をまとめた)の本を出版したいです。 保護犬の支援活動もしていきたいと考えています。 仕事では、沖縄、東京に続き、海外に関わって美容の仕事を展開していきたいですね。私には数年先の自分のイメージがあって、これまで意識していたらいつの間にか現実になっていました。常に先を見据え、意識することが大切だと思います。
イチオシ美容法は?
シンプル イズ ベスト!あれこれやるより基本的なことをきちんと。十分な睡眠と適度な運動。食べ物で気を遣っているのは水とオイルです。十分な水分を摂るのはもちろんのこと、体にオイルが足りなくなってくるので、食したり、肌につけるのは、高品質なオイルにこだわっています。外食では何でも食べますが、普段の食事は質素に食べ過ぎないことです。
ボディはセルフケアが基本ですが、自分でハンドケア出来ない部分は、月に一度スタッフにケアしてもらい、メディカルエステにも通っています。
運動は歩くくらい。15年続けている琉球舞踊はしばらく休んでいますが、そろそろ始めようかな(笑)。
【インタビュー後記】
ひとつも無駄にしない、無駄にしたくない。人生で起こった出来事すべてを糧にして成長につなげているので、無駄だったこと、意味がなかったというものがないんですと語る伊是名佑有里さん。他人と比べず、自身の人生を全うし、謳歌しているようにも見えます。内面からあふれ出す充足感は、自分の人生に責任をもち、歩み続けるなかで積み重ねてきた強さなのかもしれません。
スピードや効率が重視される時代でも、何かを究めるのに楽な道はない。大切なのは、基礎・基本。新しいものを学ぶ努力を怠らない姿勢。努力し続ける姿は、ゆるぎない強さとして映り、ぶれない自分につながっているように思えました。
(記事、写真 朱瞳碧晃)
朱瞳碧晃(あやとうみき)
ビューティーライター、フォトグラファーとして活動。美魔女フォト(ヘアメイク込)、出張撮影、HP・広告用の商用写真撮影やセールスライティング代行を行う。
リポーター経験より、白霧未來でイベントMC、披露宴司会としても活動中。