野村ホールディングスと米投資ファンドのカーライル・グループによる買収計画が明らかになったオリオンビールの本社=18日、浦添市城間

 

野村ホールディングス(東京都)と米国に拠点を置く投資ファンドのカーライル・グループが、オリオンビール(浦添市、與那嶺清社長)の買収を検討していることが18日、分かった。両社がアサヒを除く株主から株式公開買い付け(TOB)で株式を取得し、傘下に組み込む見通し。買収額は数百億円規模になるとみられる。県内や国内のビール出荷量が減少傾向にある中、両社の投資により、経営強化や販路拡大に取り組む。一方で両社が、オリオンビールの資産価値に着目しているとの見方もある。

 

一部株主 株式売却を検討

 

オリオンビールの株主数(2018年3月末時点)は599人で、02年に業務提携をしたアサヒビールが10%を持つ筆頭株主となっている。アサヒは引き続き株式を保有し、経営にも携わるとみられる。複数の関係者によると、一部の株主は株式売却に向けて検討を始めているという。

 

オリオンビールの17年度のビール類売上数量は、市場の縮小などもあって県内は前年度を下回った。海外売り上げは米国や中国向けの出荷数量が拡大し、前年度を上回っている。カーライルは飲食関連事業にも投資実績があるため、オリオンビールの経営に参画した場合は、高い専門性やネットワークなどを活用しながら海外展開を後押しするとみられる。

 

オリオンビールは「取締役会として企業価値向上のためにさまざまな選択肢を常に検討している。(買収についても)選択肢の一つだ」としている。一方で「現時点で決定している事実はない」と強調した。

 

オリオンビールの18年3月期決算は、売上高が前期比1・3%増の262億9300万円、経常利益は同3・6%減の32億7800万円、純利益は同12・9%減の23億4900万円だった。ビール類は海外・県外向けの出荷が順調だったほか、リゾートホテル事業も好調で売上高を押し上げた。

 

県経済界に衝撃

 

地元資本集め57年発足

 

オリオンビールは1957年5月18日、「沖縄ビール株式会社」の名で具志堅宗精氏を初代社長として発足した。

 

先立つ同年3月、新聞紙上で資本金42万ドル、5千万B円の株式を募集した。1株500B円で10万株を募集し、約1カ月で満額に達したという。「オリオンビール50年のあゆみ」によると、オランダ資本のビール会社から50%近い株を持ちたいという申し入れがあったが、地元資本による会社として育てたいという考えから断ったという。

 

瓶詰め生ビールを発売した60年以降、順調に売り上げを伸ばしていった。清涼飲料水事業やホテル経営にも乗り出し、経営を多角化した。県外、海外にも販売を拡大した。

 

2002年、復帰特別措置による酒税軽減措置が07年に期限切れとなる見通しを踏まえ、自民党の故山中貞則氏の仲介でアサヒビールと業務提携を結んだ。オリオンドラフトビールの全国展開やアサヒスーパードライの名護工場でのライセンス製造と県内販売などが始まった。

 

復帰以降、酒税軽減

 

ビールや泡盛など沖縄県産酒類には、沖縄が日本に復帰した1972年、復帰に伴う激変緩和策として導入された酒税の特例措置が適用されている。泡盛は35%、ビールなどその他酒類は20%の酒税が軽減される。オリオンビールは復帰以降、適用を受けてきた。

 

条件である(1)復帰前から引き続いて酒類を製造(2)県内の製造場で製造(3)県内に出荷する酒類―を満たした場合に軽減される。77年以降8回にわたり、5年単位で延長されてきた。2017年からは延長幅が2年に短縮され、19年からも2年間の延長が決まっている。

 

株価に期待も効果疑問 個人株主

 

野村HDと米カーライルが株式公開買い付け(TOB)でオリオンビールの買収を検討していることについて、株主らからは株価など企業価値の向上に期待する声が上がる。一方、外資が狙うのはビール事業よりも「資産だ」「不動産だ」と疑問視する見方も強い。

 

オリオンビール株主は2018年3月末で599人。創業時に県内で株主を公募したという経緯から個人株主が多いとされる。

 

個人株主の一人は「オリオンの株は復帰前に設定されたもので、今の評価額はかなり上がっている。TOBに応じて売る人はたくさんいるだろう」と推測する。同時に「株主としては何倍も上がるはずだからいいが、会社としてはどうだろうか」とオリオンのメリットに懐疑的な見方を示した。

 

別の株主は「オリオンの株の評価は極端に低かったから、株主にとっては資産評価の向上につながる」と指摘した。

 

ただ、ファンドの狙いについては「ビール事業というより、オリオンの含み資産が魅力だろう。不動産など、取得時より確実に上がっている」との見方を示した。

 

他の個人株主の一人は「海外展開といっても、うまくいくか不明だ。ビールは水なので輸送費がかさむ」と外資が株主になる効果に首をかしげ「外資がオリオンに興味を示すとしたら、不動産だろう。沖縄はバブルなので評価額の何倍も資産価値はあるはずだ」と指摘した。

 

経済関係者、評価と困惑

 

野村HDと米カーライルによるオリオンビールの買収検討が18日、明らかになった。県民に愛されてきたオリオンビールの買収話に、県内経済の関係者の間には驚きや期待が入り交じった。

 

富川盛武副知事は「まだ詳細が分からないので軽々には言えない。情報を確認している」とした上で「経済は国境を超えた時代なので、オリオンビールの可能性が評価されたという見方ができるかもしれない。ただ、県民にとってのアイデンティティーというか、エモーショナルな部分があるのでそこは少し微妙かもしれない」と話した。

 

県工業連合会の呉屋守章会長は「県工業連合会の創立以来の主要な構成会員なので、ニュースには驚いている。今後の推移を見ていきたい」と驚いた様子で話し「沖縄は観光で脚光を浴びている。グローバル経済化の一つの視野の中に沖縄も入りつつあると感じる」と話した。

 

県商工会連合会の米須義明会長は、買収の形態が分からないとした上で「沖縄が注目されているということだと思う。今後どういう形態になるか分からないが、まるまる買収されれば経営基盤の強化にもなると思う。県産品を作っていることには変わりない。海外展開については、県産品が世に出て行く機会になる。県内市場ではパイが限られているので期待はできるのでは」と述べた。

 

県酒造組合の佐久本学会長は「詳細が分からないので、コメントは難しい」と述べ、酒税の軽減措置に関しては「株主が変わっただけでは影響がない」とした。

 

県経営者協会の金城克也会長は「詳細が分からないのでコメントのしようがない」と困惑した様子で話した。

 

“三つ星”へ外資 オリオンビール買収へ

 

野村ホールディングス(HD)と米投資ファンドのカーライル・グループによるオリオンビール(浦添市)の買収計画が18日に明らかとなった。オリオンビールが新たな事業を進める可能性がある一方で、県内の主要企業が買収されることに懸念する声も聞こえた。買収が進んだ場合、オリオンビールがどのようになるのか注目が集まっている。

 

海外販路拡大に期待/求められる地域密着

 

<解説>オリオンビールの経営に野村HDや米投資ファンドのカーライル・グループが参画することで、国内市場で苦戦しているビール類の販路拡大につながることが期待される。ただ、地域に密着して企業活動を続けるオリオンビールに海外の資本が入ることのインパクトは大きい。オリオンビールが受ける酒税の軽減措置は2年間の延長が決まっているが、将来的な影響は見通せない状況だ。

 

カーライルは国内の菓子メーカーに投資し、海外展開を後押しした実績がある。オリオンビールの経営に参画し、同様に海外展開を進めることも可能となる。ビール類の出荷量は14年連続で最低を更新しており、県内でも市場は縮小傾向にある。アジアや北米への輸出を強化することはオリオンビールにとってプラスになるとの見方もある。

 

一方でオリオンビールは県内の主要企業で、関連する事業者が数多くいる。外資系ファンドの経営参画で事業方針の変更などがあれば、県経済に影響を及ぼしかねない。県内製造のビールなどは酒税軽減措置の対象となっているが、外資の参入が軽減措置の見直しに関する議論に影響を与える可能性もある。

 

海外展開についても、輸送コストの増加や、海外ビールメーカーとの競争激化などが懸念される。野村やカーライルの経営参画が決まった場合は、地元への十分な配慮が求められるほか、オリオンビールに寄り添った形での事業展開ができるかが焦点になる。

 

県外・海外の販売増/台湾、米などへ輸出

 

オリオンビールは県内のみならず県外、海外にも販売を拡大してきた。2007年度には県外が373万千リットル、海外が49万リットルで総売り上げに対する県外・海外の構成比は7・5%だったが、17年度には県外で991万6千リットル、海外で313万5千リットルで、売り上げ構成比は23%となり、10年間で3倍以上となった。

 

オリオンは国内ビール会社シェア5位。県外では沖縄料理店の増加などを背景に売り上げは拡大しているが、発泡酒などを含むビール類出荷量では0・9%のシェアにとどまる。

 

海外出荷は、2017年度実績で台湾が134万7千リットルと最多を占める。ビアフェストを過去5回開催し、台湾のファミリーマートで定番商品化したことなどが後押ししている。

 

次いで米国・カナダの79万2千リットル、香港の23万4千リットルと続く。

 

米国では現在、缶や瓶に加えてたる生ビールも展開しており、取扱店は約130店舗まで拡大しているという。

 

韓国には07年に初輸出し、18年には500ミリリットル缶の出荷も始めた。たる生ビールの取扱店舗は550店舗に増えているという。

 

買収、不動産狙いか

 

野村HDと米カーライルがオリオンビールの買収を検討している理由として、ビール事業よりも不動産事業に可能性を見いだしているとの見方が多い。買収額は数百億円とみられるが、オリオンビールの持つ資産価値はそれ以上との見方もある。県内の複数の関係者は「人口減少が進む中でビール事業は先が見えている。沖縄の景気が好調な今はオリオンビールが持っている不動産は魅力的なはずだ」と分析している。

 

オリオンビールは本島北部や那覇市内などに、ホテルやゴルフ場など豊富な不動産を所有している。沖縄の入域観光客は増加傾向にあり、オリオンビールのホテル事業も好調に推移している。県経済は好景気が続く見通しで、県内地価は上昇を続けていることから、オリオンビールが所有する不動産の価値は高まっているとの指摘がある。

 

県内地銀の幹部は「カーライル側にとって(オリオンビールは)狙い目だと思う。B/S(貸借対照表)とPL(損益計算書)を見れば、利益の出方や安定的に稼ぐ力が分かる。資産もけっこうある」と話す。

 

一方で「オリオンにとってのメリットは分かりづらい」と感じている。

 

ある関係者は「外資系のファンドが目を付けるとしたらビール事業よりも不動産事業だろう。投資家なら将来がどうなるか分からないビール事業よりは、好調な不動産事業にお金を出したいと思うはずだ」と語る。

 

別の関係者は「(買収は)オリオンビールの海外展開をメリットとして打ち出しているようだが、大手メーカーが存在している海外市場に打って出るのは容易ではない。それよりも不動産で収益を上げた方が投資家にとってはありがたいだろう」との認識を示した。