認知症への関心と理解を広げようと、認知症の人が働く「注文をまちがえるゆいまーるな喫茶店」が8日、宜野湾市真栄原の「味噌屋がつくった骨汁専門店まかない家」で開かれた。7月に取り組みが始まり、今回で3回目。この日は3人が店員として参加した。時折注文を聞き忘れたり、配膳を間違えたりする姿に、他のスタッフや客は優しく見守り、店内は笑顔に包まれていた。
店員の3人は読谷村の平安節子さん(80)と、宜野湾市の仲宗根正行さん(66)、佐藤幹子さん(74)。家族や地域の社会福祉士らが参加を呼び掛けた。
「いらっしゃいませ」。訪れる客を笑顔で出迎える3人。最初は丁寧に確認しながら食事を運んでいたが、客が増えると次第に戸惑い始めた。仲宗根さんは「こっち、あっち」と食事を持って行ったり来たり。
佐藤さんは食事とセットになっている飲み物とデザートの種類を聞き忘れ「こんなに覚えられない。注文四つ以上は受けられないよ」と笑顔を見せつつ、次の接客に向かった。中には注文したメニューとは別の料理を届ける時もあったが「間違えたけどオッケーということで」と客も笑顔で食事を楽しんだ。
頼んだ骨汁ではなく軟骨ソーキそばを受け取った定木麻佐美さん(46)は「頼んだものは別だったけどおいしかった。普段なら嫌な気持ちになるけど、ここでは間違いも楽しい」と気分を穏やかにする寛容さや優しさの大切さをかみしめていた。関係者によると、家にこもりがちだったという仲宗根さんと佐藤さん。仲宗根さんは「仕事は楽しいね」とにっこり。以前は飲食店を営んでいた佐藤さんは「ぼけ防止になる」と懐かしむように接客に励み、伸び伸びと店を駆け回った。
取り組みは実行委員会形式で主催しており、実行委員長の元麻美さん(43)は「笑顔の連鎖を広げたい。許し合ったり認め合ったりを体験することはなかなか難しい。ここでなら体験できる。この取り組みをきっかけに優しい社会をつくることができたらと思う」と目を輝かせた。
今後もうるま市や宜野湾市、本部町での開催を予定している。