【浦添】松本哲治浦添市長が掲げる「深夜の子連れ飲食の制限」に関し、その方針を決める市教育委員会の「こども青少年運営協議会」が4日開かれる。松本市長は罰則無しの条例化を提起しているが、市民や有識者からは「条例までつくる必要はないのでは?」「他者排除の論理に使われる」といった疑問や反対の声が根強い。この間の経緯を振り返り、論点を整理する。
市長選の公約
深夜の子連れ飲食の制限は、松本市長が2017年の市長選の公約に掲げた。本年度、中学校区ごとに円卓会議を開催し、民生委員やPTA関係者らが議論。11月26日、その締めくくりとなる大円卓会議で、松本市長は「子どもは早く帰そう、早く寝かそうという呼び掛けに近い」条例制定を提起した。登壇者からは賛成の声の一方、悪影響を懸念する声もあった。
この大円卓会議では男性登壇者から「貧乏とあほは遺伝する」との暴言が飛び出し、物議を醸した。市には苦情が複数寄せられ、いったん公開した会議の動画を削除。議事録なども公開されていない。松本市長は取材に対し「(男性の発言は)良くない表現だった」としつつ、市議会12月定例会の答弁や自身のSNSでも言及していない。
知らない市民も
一方、条例化に関する市民の理解はあまり深まっていないようだ。1日、市内で子連れの人らに話を聞くと「罰則がないなら呼び掛けや宣言でいいのでは?」「よく分からない」などの声が相次いだ。条例化の議論自体、知らない市民も少なくなかった。
ある与党市議は「市民の賛否は半々。自分も考えがまとまっていないが、夜遅くに外食せざるを得ない家庭もある。条例化するなら、そこへのフォローが必要だ」と話す。松本市長も「特殊な境遇の家庭への配慮は当然」としつつ「支援の在り方は子連れ飲食の制限とは別に考えるべきだ」と理解を求める。
「白紙にすべき」
これに対し、大円卓会議に登壇した上間陽子・琉球大教育学研究科教授は「条例化は白紙にすべきだ」と訴える。「いったん条例ができれば、それぞれが抱える事情など無視されてしまう。社会的に何が○で何が×かジャッジされ、他者に対して厳しい批判を向ける回路をつくってしまう。大円卓会議の差別発言は、条例化の帰結を示していた」
市教委のこども青少年運営協議会は、元大学教授やPTA関係者ら10人の委員でつくる。条例化か、宣言か、白紙か、はたまた―。協議会が示す方針を踏まえ、松本市長が近く最終判断する。
(真崎裕史)