安倍晋三首相の辞意を伝える琉球新報号外を見つめる人たち=28日午後4時すぎ、那覇市久茂地 画像を見る

 

安倍晋三首相辞意の報は県内でも一気に駆け巡った。新型コロナウイルス対策が喫緊の課題となる中、体調悪化による退陣に県民からは気遣いや驚きの声が上がる。これまで「アベノミクス」といった経済政策や安保法制を推進、改憲に前のめりの政治姿勢を打ち出した安倍首相。沖縄関連では米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設など、米軍や自衛隊基地建設を強行した。「期待した」「勝手だ」「戦前の空気」など、県民の評価は割れる。

 

新基地建設が進む名護市。市辺野古に住む島袋文子さん(91)は数年前、安倍首相に手紙を送った。沖縄戦で戦没者の血の混じった泥水を飲んだ経験などをつづり、新基地建設反対の思いを込めた。返事はないまま首相は職を辞する。島袋さんは「もろ手を挙げて喜ぶわけにはいかない」と指摘する。新基地建設は今も続いており「(建設阻止を)諦めない」と気を引き締めた。

 

会社員の嘉陽宗一郎さん(25)=名護市=は「これまで県民の思いと相反する部分もあったが、基地問題、負担軽減のために動いていて、今後も期待していた」と辞任を残念がった。「次の政権には、新型コロナウイルスの影響を受けた県内観光業者などへの補助、支援をさらに強化してほしい。新しい沖縄の成長戦略をつくってもらいたい」と願いを込めた。

 

普天間飛行場を抱える宜野湾市。普天間爆音訴訟団の玉元一恵事務局長(60)=宜野湾市=は「病気は大変だと思うが、この時期の辞任は本当に勝手だ」と批判した。安倍政権が辺野古への基地移設を推し進めてきたことに触れ「県内移設をしても米軍機が沖縄の上空を飛ぶことに変わりはなく、問題は何も解決しない」と疑問視した。

 

那覇市の妻の自宅を訪れているという山崎剛さん(72)=埼玉県=は「新型コロナウイルスの対策は十分ではないと思っていた」と語る。沖縄を巡る政策については「歴代自民党政権と特に変わらない。沖縄のためとか、力を入れた政策がある印象はない」と淡々と語った。

 

南城市に住む徳田ユキさん(84)=無職=は沖縄戦で家族を失い、戦争孤児となった。安保法制や特定秘密保護法などを成立させた安倍政権は「戦前の空気が漂う政権だった」と語る。「安倍さんは憲法を変えて、自衛隊を軍隊に位置づけようとしていたが、戦争になったら軍隊は住民を守らない。次の首相は戦争につながるものには全て反対し、平和を貫いてほしい」と話した。

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