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10月20日より開幕したフィギュアスケートのグランプリシリーズ。11月の初戦を前に、“絶対王者”羽生結弦選手(23)の“ある発言”が注目を集めている。

 

「もう勝つとか負けるとかに固執しすぎることはないです。自分のために滑っていいかなと」

 

この発言は8月下旬、トロントで報道陣のインタビューに答えたもの。平昌オリンピックでは「圧倒的に勝ちたい」と述べるなど、常に勝利へのこだわりを見せてきた羽生。そんな彼がこのタイミングで見せた変心。さらにインタビューではこんな発言も……。

 

――競技者として終盤に差し掛かったという気持ちは?

 

「それはあります。でもいつやめるかは全然考えていない。今は4回転アクセルを跳びたいです。とりあえずアクセルまでは何とかしたいと思っています」

 

ファンのみならずフィギュアスケート界に激震が走った。

 

「新シーズンの羽生選手は4回転半ジャンプの成功を目標に掲げています。『アクセルが今一番のモチベーション。今シーズン中に跳びたい』と語るなど、熱意は今まで以上です」(スケート連盟関係者)

 

今季からルール変更によりジャンプの得点は大きく下がることに。ただ、そんななか羽生はオータムクラシックでも4回転ジャンプにあえて挑戦していた。

 

「羽生選手はこれまでひたすら周囲の期待に応え続けてきました。そんな彼が勝利よりも自分のために挑戦することを選んだということは、よほどのこと。いよいよ彼のキャリアも終盤に差し掛かったという気がします」(前出・スケート連盟関係者)

 

最後を見据えた4回転半ジャンプへの強いこだわり。その背景にはスケート人生の原点が影響しているという。

 

「羽生選手はジュニア時代から『人類初の4回転アクセルが僕だったらいいな。羽生結弦の名を歴史に刻みたい』と宣言していました。1時間の内45分をアクセルの練習にかけるなど、とにかくジャンプにかける思いが人一倍強かったそうです。そしてそのときジャンプのお手本にしていたのが、彼にとって憧れであるロシアの“皇帝”エフゲニー・プルシェンコ元選手(35)。羽生さんはプルシェンコ選手の演技を録画して、ビデオを擦り切れるまで見ていました」(前出・スケート連盟関係者)

 

幼少期の憧れをなぞるように、今シーズンのフリー演目で羽生が選んだ曲は「Origin」。プルシェンコがかつて使用した曲目に、アレンジを加えたものだ。日本語で“起源”を意味する言葉からも、羽生の原点への強い思いがうかがえる。実際、羽生もインタビューで次のように語っている。

 

「スケートを始めたきっかけは楽しかったから。その楽しかった気持ち、今まで歩んできた大変だった道のりを思い返して、その自分に対して恩返しというか、自分が報われることをしてあげたい。初心に帰って、スケートを楽しんで、自分のために滑れたらと思いました」

 

自分への恩返し――。それは前人未踏の五輪連覇という偉業を達成した今だからこそ、できることなのだろう。

 

「五輪2連覇という夢を叶えたことで『もっと上手くなりたい!』と夢中で練習をしていた幼少期の気持ちに立ち返ったのでしょう。そうした思いが、4回転半への原動力になっているのです」(前出・スケート連盟関係者)

 

新たな目標に向けて走りだした羽生。だが、その道は前途多難だ。羽生自身も「まだプログラムに入れる予定はない。かなり練習しないといけない」と語っている。果たして、その目標が達成されるのか。羽生の兄弟子でもある元フィギュア選手の佐野稔さん(63)はこう期待を寄せる。

 

「恐らく4回転半を最初に完成させるのは羽生君になるんじゃないかなと思っています。トリプルアクセルを跳べる人はたくさんいますが、羽生選手クラスの完成度で跳べる選手は少ないです」

 

これまで数々の伝説を残してきた羽生。最終章が今始まろうとしている――。

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