では、仕事でうまく行かなかったときの対処法は?

 

「仕事で失敗したときは、やはりショックです。でも仕方ないことなので、パーッと笑って過ごすようにしていますね。そこまで気にしない性格というか、とにかく切り替えを早くしてしまうんです。結局、クヨクヨしていても、結果は変わらないんですから。『次のことを頑張ろう!』って。

 

でも、けっこう人見知りで、元スキー選手をはじめ、すごく親しいコたちとは会いますが、新規の『アスリート会』なんかには積極的には出席してなくて(笑)……営業職ですから、いまはなるべく『参加しなきゃ』って心がけています」

 

東京オリンピックが延期となり、アスリートたちはそれぞれ目標設定し直して、リスタートを切ることになる。「コロナとの共存」を覚悟のうえで、日常を取り戻そうとしている私たちも、大きな不安は拭い去れない。最後に、自身の半生を踏まえたうえで、里谷さんがこんなメッセージをくれた。

 

「選手時代の私は、試合で滑り終わってVTRで確認したとき、『ああ、この一瞬の、このミスさえなければよかったのになあ』という後悔がありました。同じ失敗を二度としないようにと、次の試合に向けて克服する努力をしてきました。そうして1日1日を大切に過ごしてきた選手時代だったんです。いま、このような状況下では、いえむしろ、いまだからこそ『後悔のない毎日を過ごす』心がけが大事かなと思う。

 

とはいえ、いいことばかり言ってもいられませんよね。やっぱり“後悔”ってどこかでするものです。試合でダメだったとき、仕事でミスしたとき……落ち込んでしまう辛い時期が、何度かありました。でもその都度、思っていたのは、『これまでも乗り越えてきたんだから、なんとかなるさ』ということ。本当に『生きているといろんなことがあるんだな』と私も感じています。みなさんも、『なんとかなるさ』と前を向く気持ちを大事にしてほしいですね」

 

この「後悔しないために、一日一日を大切に過ごす」姿勢と、たとえ後悔しても「なんとかなるさ」というおおらかな心構え。かつて競技で世界を制し、現在はビジネスパーソンとして活躍する里谷さんならではの考え方ではないだろうか。

 

(取材・文:鈴木利宗)

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