プランクとは、うつぶせになって前腕と肘、つま先を地面につき、体を浮かせるエクササイズのこと。このプランクのやり方を羽生に教えたという、元専属トレーナーの菊地晃さんに話を聞いた。
「特にフィギュアの場合、体幹がしっかりしているかどうかは、演技の出来を大きく左右するのです」
羽生の場合、日本人離れして手足が長い。見栄えはいいが、体の中心軸がブレやすく弱点にもなりうる。中心軸のブレは、ジャンプやスピンでも傾きが生じたり回転が遅くなってしまうのだという。
「結弦は、体幹を鍛えたことでケガが減り、成績が伸びるという経験をしています。これまでケガなどでスケートがしたくてもできなかったことは何度もありますが、彼は気持ちの切り替えがとてもうまい。一度は落ち込んでも、すぐに立ち直り、ケガへ影響のない範囲で上半身を鍛えるなど、今やるべきことを淡々とこなしていく。このコロナ禍こそ体幹を鍛える時期だと考え、トレーニングをこなしているでしょう」(菊地さん)
羽生が近年最大の目標としているのが、4回転アクセルの完成。その挑戦について、“技術はすでにあるが、身体能力を高める必要がある”と、コーチのオーサー氏もあるインタビューで語っている。
体幹を鍛え、夢の4回転アクセルを成功に導く。さらにその先を見据えている可能性は高い、とは前出のフィギュア関係者。
「思うように試合に出られないとなれば、今シーズンは羽生選手にとって不完全燃焼のシーズンになりそうです。そうなれば、次のシーズンに予定されている北京五輪への出場を狙う可能性は、ますます高まってきた。出るからには、4回転アクセルをひっさげて、当然、金メダルを狙うでしょう。彼は負けず嫌いですからね」
4年前のインタビューで羽生本人もこんなふうに語っている。
《オリンピックと世界選手権で優勝した次の年は何も得られなかったけど、悔しかった次の年は、僕、成長できるんですよ。そう思うと、来年が楽しみ(笑)》(「クーリエ・ジャポン」WEBより)
4回転アクセルの次は、“王者復活”の五輪3連覇を――。家族の献身的なサポートを受けながらの深夜0時の極秘特訓で羽生は次なる武器を磨いていた――。
「女性自身」2020年9月29日・10月6日合併号 掲載