■「夏までに成功するのではないでしょうか」
現役時代、日本人として初めて競技会で4回転を成功させた経験をもつ前出の本田さんは、
「まだ回転が足りていないです。完成度は7割くらいですかね。ただ本人は“(ふだんの練習では)もっといい”とも言っていましたね。不思議なことなんですが、突然跳べちゃうこともあるんですよ。今回の回転速度などを見ると、うまくはまったときには『うわっ、成功しちゃった!』ということが起きることはあると思います。練習の雰囲気、集中力、体の調子、それらがピタリと合えば、夏までに成功するのではないでしょうか」
練習で成功したとしても、羽生本人が「まずは着氷させて、完成度を上げて、試合に組み込めるようにしたい」と話したことがあるように“4回転半を組み込んだ完成された演技”が最終目標となる。
プログラムに組み込む難しさについて、元五輪代表で現在は日本スケート連盟のナショナル審判員でもある小川勝さんはこう語る。
「練習で7~9割は降りられていないと試合では使えないでしょう。現状を見ると、プログラムに入れた場合、成功しても失敗しても全体が崩れそうです。4分間つなぐ必要のある緊張感が、1回のジャンプで途切れるリスクがあります」
練習過程でのケガの心配もあると、識者たちは口をそろえる。
「焦ってケガをするのがいちばん怖いですね」(佐野さん)
「体にすごく負担がかかるジャンプですから」(本田さん)
選手としては、ベテランといえる26歳。自らも「年だな」「体動かなくなった」と感じたこともあるというなか、羽生は肉体を限界まで酷使して挑んでいるのだ。
「女性自身」2021年5月11日・18日合併号 掲載
関連カテゴリー: