【前編|パリ五輪】弱点がない石川祐希、逆境も楽しむ髙橋藍…会長・川合俊一が見たバレーボール男子最強伝説より続く
7月27、いよいよ開幕したパリ五輪。バレーボールは実力、人気ともに最高潮に達している。オリンピックのネーションズリーグでは男女ともに初の銀メダルを獲得。“史上最強”と称されるチームの陰には、勝利の女神の寵愛を受けるラッキーボーイ、川合俊一(61)の姿があった。
川合が協会会長に就任して以来、日本代表は勝ちを重ね、勢いは止まらない。「金メダルを本気で目指す」男子キャプテンの石川祐希は言う。「メダルを取れるメンバーがそろっている」川合は断言する。
黄金に輝くメダルに向かって、跳べ、ニッポン!
■当時はキャスターからバラエティ、司会までやっているのは僕くらい
’90年に富士フイルムを退社。現役引退を発表すると同時に、雑誌やテレビなどからオファーが殺到したが、タレント活動には興味がなく、すべて断った。
アメリカに行こう! そう決意したものの、富士フイルムからもらっていた給料は3万円しか残っていなかった。しかし「お金は誰かに借りればいい」と。何も心配しないところが川合らしい。
アメリカでビーチバレーの魅力にハマった川合は、プロのビーチバレーボール選手として世界各地のツアーに参戦。帰国すると、ビーチバレーの楽しさを日本で広めるため、メディアでの活動を始めた。
「ビーチバレーは、バレーボールの世界と違って開放的で、自由な感じがよかったんです。日本でビーチバレーを普及させるためには、メディアに出て宣伝しなきゃだめだな、と。当時、いくつかの局から誘われたなかで、スポーツ番組『独占!! スポーツ情報』(日本テレビ系)のキャスターをやらせてもらうことになりました」
テレビ局から求められたのは、ただ一つ、腹から声を出すこと。むしろ、「アナウンサーの練習はしないでくれ」と言われ、きちんと話すことよりも、自分らしさやカラーを出すことに力を注いだという。
「キャスターをやってよかったのは、それまで触れる機会のなかったジャンルのスポーツに出合えたことです。取材で初めて知ったスポーツの試合を見に行ったり、選手のインタビューをしたり、ものすごくいい経験になりました」
クイズ番組『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』(日本テレビ系)に出演したり、情報・バラエティ番組『こたえてちょーだい!』(フジテレビ系)の司会を務めるなど、タレントとしても人気者になった。
「クイズ番組はすごく好きで、宣伝できなくても出ますと言っていましたね(笑)。その当時は、僕のようにスポーツからバラエティまで幅広くやっている人はあまりいなかったかもしれない。元アスリートが帯番組の司会をやるなんてすごいね、とよく言われていました」
そのすべての経験が、今に生きている。
「やっちゃいけないこと、やらなきゃいけないこと、メディアとのかかわり方。考えなきゃならないことは山ほどある。今までのキャリア、経験を全部注ぎこんで、ふたたび、バレーボールと向き合っています」