■「日の丸を背負うほど貧乏になる」
経済的苦境について日本バドミントン協会を取材すると、担当者はこう語った。
「強化費の予算は確かに8億円から3億円に圧縮しています。’16年のリオデジャネイロ五輪では女子ダブルスが金メダルを獲得していますが、東京五輪では混合ダブルスで銅メダル1つという結果となり、協会に支給される強化費も減額されているからです。
また円安により渡航費も、過去の倍ほどになっています。この五輪に限らず、海外大会への渡航費の一部負担を選手にお願いしています。
ほかの多くの競技でも決算は赤字となっており、バレーやサッカーなどの少数以外は、どの協会も(渡航費の)一部負担はお願いしているのが実情です」
確かに各協会、厳しいようだ。7月2日、日本レスリング協会は、’23年度決算が約4千400万円の赤字だったこと、そして遠征費の選手の一部負担を今後も継続する見込みであることを明らかにした。
「選手たちの窮状について、レスリングのある指導者は、共同通信の取材に対して、『(遠征のために)借金をした選手もいる。日の丸を背負うほど貧乏になる』と語っていました」(前出・スポーツ紙記者)
実はこうした事態は1年前から予想されていた。昨年7月にNHKが33の団体にアンケートを実施しているが、全体の9割以上が「課題を感じる」と答え、「強化費やスポンサーの減少」「汚職や談合事件でのイメージの低下」などを指摘していたのだ。
スポーツジャーナリストの小林信也さんはこう話す。
「東京五輪はバブル状態でしたが、その後、強化費はかなり減ってしまいました。たとえば水球選手たちは、東京五輪の前は年間240日も海外合宿していましたが、いまはとてもそのレベルには達していません。
レスリングや卓球などでは、試合当日まで“練習パートナー”が必要となりますが、今回はパリへそうした人材を帯同することも難しいようです。
またトライアスロンチームは少ない予算ながらも、競技会場から遠い選手村ではなく、セーヌ川に近いホテルに宿泊すると聞いています。少しでも競技に有利に備えるための苦肉の策ですが、宿泊費や食費が非常に高額なため、かなり苦労しているようです」
経済の低迷が叫ばれ、さらに円安の直撃を受けているニッポン。序盤では「メダルラッシュ」とも報じられているが、このまま日の丸を背負う選手たちには苦境に負けず、頑張ってほしい。