(写真・神奈川新聞社)
沖縄で相次いだ米軍関係者による事件・事故を受けて在日米海軍が全将兵を対象に導入した規制が、基地を抱える横須賀の街に波紋を広げている。今回の規制は飲酒の全面禁止と基地外の行動制限という厳しい措置で、周辺住民と米軍家族の交流も中断を余儀なくされた例もある。基地との交流を地域活性化に結び付けようとしてきた横須賀市の政策にも影響が及びそうだ。
横須賀基地内外での飲酒全面禁止が出された6日以降、米兵向けの飲食店が立ち並ぶ「どぶ板通り商店街」は人影もまばらで、閑散とした雰囲気が漂う。店内は日本人ばかりで、街頭には憲兵の姿が目立った。
「飲酒制限の期限が決まっていない。1カ月以上続くと、さすがに売り上げに響く」。客の7割が米軍関係者というバーの男性店員(30)は心配げだ。
今回の規制は禁酒に加えて勤務時間外、自宅と勤務先の往復や保育施設の送り迎えなど、生活に必要なものを除く基地の外での行動を禁止している。
2012年に沖縄で起きた米軍人の集団強姦(ごうかん)致傷事件後、全軍人を対象に夜間の飲酒禁止などの規制を導入したが、今回はそれを上回る厳しい措置となった。関係者によると、行動制限は将兵に加え、軍属や家族にも「指針」として促されている。「今は米海軍の人事異動の時期でもあり、日本を離れる友人のお別れ会を企画していたけれど、できなそうだ」。米兵の友人がいる女性(57)が明かした。
横須賀市は16年度の新規事業として、千人規模の米海軍関係者にモニター観光を実施する事業を立案している。観光地を結ぶ循環バスを走らせて米軍人らの回遊を促し、インバウンド(訪日外国人客)環境を検証する構想。吉田雄人市長も「基地関係者を消費者として捉え、市場規模を知りたい」と強調しており、1日に面会したカーター在日米海軍司令官にも協力を要請。8日開会の市議会定例会に関連議案を提案する矢先だった。
市は「東京五輪を見据えて三浦半島全体をインバウンドに強いエリアにしたい。取り下げという話にはなっていない」。ただ行政や議会からは「事件があったとはいえ、これ(事業)はこれ」と割り切る意見がある一方、「自治体同士や民間との連携とは違い、相手は米海軍。テロなどの有事を含めたリスクを考え、もっと慎重に進めるべきだった」と批判的な意見も出ている。