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(写真・神奈川新聞社)

星飛雄馬やアムロ・レイなどアニメ史に残る主役を演じてきた横浜出身の声優、古谷徹(63)がデビュー50年を迎えた。母の夢をかなえようとまい進した10代、自分のため走り抜けた20代、家族を第一に考えた30代、社会貢献を念頭に置いた40代、次世代に経験を受け継ぐことを優先した50代。決めた人生を貫いてきた。「幸運としか言えない」と謙遜するが、半世紀もの間、第一線で活躍する結果につながった。

 

古谷は1953年、豆腐店の長男として生まれた。ラジオに合わせ歌い踊る姿を見た母が、「芸事に向いているのでは」と東京・大井町の児童劇団に5歳で入団させた。私学の関東学院六浦小学校(横浜市金沢区)に進学した翌年には、所属を「劇団ひまわり」に替え、子役として活動した。

 

忍者時代劇「隠密剣士」では親の敵を討つため、忍者に弟子入りする少年を熱演。「大好きなヒーローに忍術を教わることができた。日常にはない刀や手裏剣などの小物にわくわくした」と振り返る。

 

根岸線開通前、磯子区の自宅から、都内の大泉学園にあった撮影所までは、京急線やJRなどを乗り継ぎ、約2時間半の一人旅だったが、乗り換える渋谷の百貨店のおもちゃ売り場をのぞくのが楽しみだったという。

 

洋画「ローマに咲いた恋」で10歳の時に初めて吹き替えを体験。アニメの声優は「海賊王子」の主役・キッドを13歳で務めたのが始まり。15歳で「巨人の星」の主人公・星飛雄馬役を射止めた。野球未経験という弱みを払拭(ふっしょく)しようと、弟を相手に骨折するまでキャッチボールの練習をした。

 

仕事で授業に出られず、よくなかった成績は、中学2年生で経験した初恋の力でトップに。米国の歌手ジミ・ヘンドリックスに憧れ、ギターやバンドにも夢中になった。

 

大学卒業時はオイルショックも重なり、進路に迷っていた。背中を押したのは「巨人の星」で得た達成感だった。

 

一方、ヒーローのイメージを脱却できない苦しみもあった。モヤモヤとしていた25歳の時に受けたのが、「機動戦士ガンダム」のオーディション。音響監督の松浦典良に個性を認められ、開眼した。プロとしての第一歩。戦いたくない、繊細な少年を演じたことで、演技に幅が生まれた。

 

宇宙空母「ホワイトベース」の指揮官のブライト・ノアから殴られたアムロが、女友達のフラウ・ボウに向けて「悔しいけど、僕は、男なんだな…」(第9話)と話した言葉は、自身の人生と重なる。

 

「男には人生の中で、自分は男だと自覚する時がある。アムロはこの出来事を機に少年から男になった。僕が一番胸に残っているのは40歳の時。津久井浜でウインドサーフィン中に沖に流されてしまって、何とか岸まで戻った。僕の姿を見て号泣した妻を見て、『こいつを守らなくてはいけない』と痛感した。守りたいと思う存在は、男を強くしてくれる」

 

今月23日に、古谷が主演などを務めたアニメ「聖闘士(セイント)星矢(セイヤ)」や「ドラゴンボールZ」の主題歌を、キャラクターの思いを込めて歌ったミニアルバム「THANKS♪ -感謝-」を発売。選んだ3曲は「感動し、高ぶり、楽しめる。エンターテインメントの三大要素が入っている」と胸を張る。

 

支えてくれたファンに感謝を込め、24日から47都道府県を巡るイベントを開始。幕開けは地元・横浜のアニメ専門店「アニメイト横浜」(同市西区)で行う。

 

キャリアを積んだ今も役を手にするためにはオーディションを受ける。最近では、「ワンピース」でルフィーの兄貴分を務めるサボ役がそう。「名探偵コナン」に登場する公安警察官の安室透とともに大好きなキャラクターを、「最後まで演じきることがいまの目標」と力を込めた。

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