(写真・神奈川新聞社)
入所者19人が殺害された障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)の建て替え方針を巡り、障害者や施設関係者らが意見を交わす緊急集会が14日、横浜市港北区で開かれた。同じ定員規模、同じ場所を前提にした県の方針に対し、「50年前にさかのぼる」といった声が続出。障害者の暮らしの場を施設から地域へ-とする理念の実現を求めた。
「事件の本質が検証されていない段階で拙速に決まった。今、本当にいいんだろうかと立ち止まって考える必要がある」
当事者団体「ピープルファースト(PF)横浜」(同市保土ケ谷区)をはじめ、県内で施設やグループホームなどを経営する社会福祉法人などが主催した緊急集会。同愛会(同区)の高山和彦理事長は、県の事件検証委員会の報告で入所施設のあり方に関する議論が手つかずにいる点を指摘し、約100人の参加者に問題提起した。
登壇者からは、県の建て替え方針が「障害者を施設から地域へ」の流れに逆行しかねないとの指摘が続出した。同愛会の大川貴志さんは「『障害が重いからできない』というのは社会常識を無効にしてしまう言葉。実践がなければ(県が定めた)共生憲章も単なる標語となり、時代とともに色あせる」と指摘。幸会(同区)の伊藤浩理事長も、地域生活を支援する環境づくりの必要性を訴え「新しい形をつくっていくことが神奈川でならできると思う」と述べた。
県央福祉会(大和市)の佐瀬睦夫理事長は「障害者が地域で生き生きと暮らせ、安心安全を支え合うシステムをどう構築するかを考えないといけない」とし、経営基盤が脆弱(ぜいじゃく)なグループホームの運営を支える連携拠点の設置を提案した。
障害者がいる家族といない家族が同じマンションで暮らしているNPO法人みんなの家(横浜市都筑区)の中村真知子さんは「新しい住まい方をつくり出し、自分に合った形を選ぶ時代がくるといいと思う。本当の意味での充実した生活とは何か、みんなで考えていきたい」と語った。
やまゆり園の建て替え方針は、家族会と指定管理者「かながわ共同会」の要望を受けて県が9月に決定、家族会は歓迎のコメントを発表している。