(写真・神奈川新聞社)
横浜市中区の元町ショッピングストリートで12日、緑一色に染まるイベントが開かれる。アイルランドの祭り「セントパトリックデー」のパレードで、今年で13回目。春の訪れを告げる風物詩として定着し、ボランティアら協力者も広がりを見せている。
パレードはみなとみらい線の開通を記念して、2004年から始まった。元町SS会の広報担当は「国際色豊かな催し。クリーンな印象がある緑を基調とし、元町のブランドにもピッタリ合う。ハロウィーンに並ぶ一大集客イベントになれば」と期待する。
アイルランドの祝日「セントパトリックデー」(3月17日)は5世紀に、同地でキリスト教普及に尽くした聖パトリックの命日に当たる。
パレードではこの聖人に扮(ふん)したアイルランド人を先頭に、緑色の衣装を着た元町の観光大使「横浜元町リカちゃん」、地元のプロサックス奏者、在日米陸軍軍楽隊やバグパイプバンドら約300人が600メートルの通りを往復する。沿道には買い物客らが二重、三重の人垣を作る。
同会はパレード中に配るアイルランドの国花「シャムロック(三つ葉)」をかたどったグッズを用意。店頭には緑色の風船や商品が並び、祝祭ムードを演出する。
アイリッシュダンスを披露するサンモール・インターナショナルスクール(同市中区)の児童たちも10年ほど前から参加。実行委員長の三村秀樹さん(54)=同市保土ケ谷区=は「元町の全面的な協力のおかげで、続いてきた。ぜひ、緑の服や小物を身に着けて、一緒に楽しんでほしい」と来街を呼び掛ける。
案内所でのフェースペインティングの手伝いや安全確保の誘導など、運営を支えるのはボランティア。スタッフにはTシャツが配られる。今年は日本とアイルランドの国交60周年をあしらったデザインと、生誕100年を迎えるアイルランド系移民のシンボル的存在でもあるケネディ元米大統領がプリントされている。
地域に住むアイリッシュの評価も高い。ジョン・マコーマックさん(43)=同市中区=も「観客との距離が近く、本場にいるようだ」と列に加わる。昨年、参加したアン・バリントン駐日大使は「元町の雰囲気が素晴らしいし、観衆も友好的。とても楽しかった」と賛辞を惜しまない。
2月中旬には西区の飲食店で、キックオフイベントが催された。中区内にアイリッシュダンスの教室を開き、海外のコンテストで入賞経験がある村松慎也さん(37)も踊った。同店では3月中、アイルランド風のサンドイッチを販売する。市内でこうした協力店は港北区内のアイリッシュパブに加え、今年は野毛エリアの店も加わった。
実行委員、当日ボランティア合わせて30人ほどで始まったイベントは、80人が関わるようになった。三村さんは「世界各地に広がるこの祝祭を横浜の街全体に根付かせたい。横浜ベイブリッジや横浜マリンタワー、大観覧車もグリーンにライトアップされるようになれば」と夢を語る。