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(写真・神奈川新聞社)

 

兵庫県西宮市の甲子園球場で19日に開幕した第89回選抜高校野球大会。神奈川からは3年連続で出場校なしと寂しい春だが、夏に向けた戦いはすでに始まっている。100人を超える部員数を誇る向上高校(伊勢原市)の硬式野球部は、大所帯の力を最大限に引き出すユニークな試みを続ける。部員全員が役割と責任を持つために企業のような「組織化」を進めたり、ディズニーの一流のおもてなしを学んだり、野球以外の課外活動から甲子園初出場につながるヒントをつかもうと模索している。

 

■課外活動に力研修、会議も

 

2月上旬に千葉県浦安市の東京ディズニーシーを訪れたのは、1、2年生の総勢99人。ただ遊ぶのではなく、アトラクションや売店で働くキャストを「日本一であり続けるために行っていることは?」「マンネリ化を防ぐためには?」などと質問攻めにしながら一日を過ごした。

 

研修から戻ると、キャストの立ち振る舞いから感じたことや、野球に生かせることを選手間で連日討論。「キャストが本気なので、お客さんも本気で楽しめる。自分たちもやるべきことを徹底しよう」「レシートを両手で渡してくれたように、試合で審判からボールを両手で受け取った方がいい」といった意見が飛び交ったという。

 

同校の硬式野球部は毎年のように部員が100人を大きく超えるが、学校のグラウンドは内野ほどの広さしか使えず、練習環境に恵まれていない。同校教諭の平田隆康監督(42)は「メンバーでなくても野球部にいた意味があるように」と会社員時代の経験も生かし、7年ほど前から部員全員がやりがいを持てる一体感ある組織づくりを進めてきた。

 

組織は、組織運営、グラウンド管理、用具管理、打撃強化、トレーニング、データ・情報など10グループに分けられ、さらに来客対応、走塁分析、体重増加-といった専門的な47チームに細分化される。全員が二つ以上のチームに所属。各グループのリーダーはベンチ外の選手も多く務め、日々活発な議論を交わして組織を改善している。

 

過去には東京ディズニーランドや、東京都の上野動物園などでも研修を開催したといい、今回のディズニーシーは企画運営チームの2年生、横山尚輝さん、鈴木青さんが中心になって考案。学んだ成果を各自に俳句で発表させるなど表現力を磨く工夫も凝らした。

 

2人はレギュラーではないが、「野球の練習だけで強くなれるわけじゃない。各選手の視点からの考えを持てば、練習でもいろんな意見が飛び交うようになり、プレーのレベルアップにつながる」と声をそろえる。野球に生かせる企画運営にやりがいも感じているという。

 

同校は過去、夏の神奈川大会で3度準優勝し、甲子園まではあと一歩。2014年には決勝で全国的な強豪の東海大相模高に敗れている平田監督は、あらゆる体験を通じた選手の成長が不可欠との思いを強くしている。「野球以外のことを一緒に体験し、お互いを理解することで、試合でも一体感が強くなってきた。それぞれが役割を果たした体験は、社会に出てからも役に立つはず」と話している。

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