(写真提供:神奈川県/神奈川新聞社)
神奈川県が所有し、県民ホール(横浜市中区)で保管していた棟方志功の版画がカラーコピーのレプリカにすり替わっていた問題で、県庁内で15年前にも日本画(600万円相当)がすり替えられる事件があり、現在も見つかっていないことが25日、神奈川新聞社の取材で分かった。当時も展示中の全美術作品を確認するなど再発防止策を講じたが、棟方の版画が偽物かどうかは確認できなかった。県は25日、棟方作品の被害届を神奈川県警加賀町署に提出、受理された。
県によると、15年前に盗難に遭ったのは、当時平塚市在住の日本画家で東京芸術大名誉教授だった故工藤甲人さんの日本画「作品」(10号)。2002年11月19日、新庁舎の階段踊り場に展示されている絵が違うことに職員が気付き、県民ホールギャラリー課職員が確認して発覚した。木に止まる鳥の絵が、素人が描いた山の風景画(10号)にすり替えられていた。
県は盗難事件として同署に被害届を出すとともに、「管理の甘さに問題があった」などとして展示している他の美術作品を一斉点検。当時、県民ホールの館長室に飾られていた棟方作品も確認したとみられるが、県文化課は「すり替えられていたとしても額から取り出さない限りカラーコピーとは分からなかったのでは…」としている。
「作品」の盗難被害は、事件発覚日に公表して返還を呼び掛けたものの、依然として見つかっていない。県は現在、取得時価格100万円以上の美術作品を約700点所有しているが、展示作品数は不明としている。
一方、棟方作品の被害届を巡っては、県は今月17日にも同署に相談していたが、購入時に本物だったという証しなどの確認を求められ、改めて「当時、棟方志功本人から職員が直接受け取った」と説明するなどして受理された。