(写真・神奈川新聞)
危険なあおり運転が一向になくならない。大井町の東名高速道路で起きた悲惨な事故を繰り返すまいと、全国の警察が摘発を強化するが、車に乗る誰もが巻き込まれる可能性のある身近で深刻な事態だ。識者は、あおり行為に至るきっかけは「ささいなことが多い」と指摘。冷静な対応を心掛けるとともに、ドライブレコーダーの装備など、いざへの備えを怠らないよう呼び掛ける。
東名の事故では、パーキングエリアの通行路に車を止めていた男に、「邪魔だ」と注意したことが、その後のあおり行為の引き金になった。県警によると、ごみ収集車が被害に遭った横浜横須賀道路のケースでは、収集車と車線変更のタイミングが重なった直後から、危険運転致傷容疑などで逮捕された男のあおり行為が始まったという。捜査関係者は「容疑者は『邪魔された』と感じたのではないか」と話す。
交通心理に詳しい九州大大学院の志堂寺和則教授は、乗車していて互いに顔の見えない関係性が、ささいなトラブルから発するいらいらを増幅させる心理状態に注目する。「歩行中はコミュニケーションが取れるが、車では相手の顔が見えない。相手への不信感が生まれやすく、『ばれないから大丈夫』『危なくなったら逃げよう』との心理も働きやすい」と分析する。
ただ、いっときの感情に任せた行為の結果と代償は重く、大きい。県警幹部は「あおり運転による重大な事故が県内で起きており、悪質、危険な運転は厳しく取り締まり、撲滅したい」と力を込める。
あおり行為から身を守るにはどうしたらいいか。志堂寺教授は「法定速度を守るとか、車間距離を適正に保つなど、安全運転の基本を順守することが大切。それがきっかけをつくらないことにつながる」と説明。「トラブルを記録できるドライブレコーダーを備えることも有効。トラブルに遭った際は、できる限り人目がある場所に停車し、ドアはロックして絶対、外には出ないように」と強調する。