「暮らしの中にある身近なところにこそ、沖縄の工芸品を使ってほしい」と話す田港真紀子さん=8日、宜野湾市大山のkufuu(写真・琉球新報社)
沖縄の地に脈々と受け継がれてきた伝統技術に、新しい息吹を吹き込んだ「オキナワンクラフト」の人気がじわり広がっている。工芸品をもっと身近に感じてもらえるようにと、趣向を凝らした作品を生み出す若手職人の台頭にも目を見張るものがある。「定番の土産品」から「生活を彩るおしゃれな日用品」へと変化する新沖縄工芸品の魅力に迫る。
一品一品が主役
宜野湾市大山にある「ギャラリーショップkufuu」は、沖縄に暮らす作り手の作品に焦点を当てた「コンセプトストア」。2009年の開店以来、工芸の島・沖縄ならではのものを発信してきた。店内には琉球藍で染めたストールや木工に色彩豊かな漆を施した木皿、大胆な赤花が描かれた芭蕉紙など、従来の工芸品とはひと味違った一点ものがそろう。
「商品全てに作り手の思いやストーリーが詰まっている。一品一品のどれもが主人公です」と話すのは、ショップマネジャーの田港真紀子さん(39)。大量生産には出せないぬくもりと、使う程に深まる味わいが工芸品最大の魅力と力説する。田港さんは「沖縄の素晴らしき手仕事を、日常生活に取り入れるという贅沢(ぜいたく)を多角的に提案したい」と目を輝かせる。
創造力無限の紅型小物
「紅型×ミシン」で乙女心をくすぐる小物類を創り出すのは、崎枝由美子さん(37)と當眞裕子さん(32)の姉妹ユニット「カタチキ」。染め織りが盛んな首里で生まれ育った2人の工房も、この地にある。
「新しい中に、文化がかおるものづくり」というコンセプトの下、紅型担当の崎枝さんが500年前と変わらぬ伝統技法を踏まえて染め上げた紅型を、縫製担当の當眞さんがミシンを駆使して形にしていく。
ブーゲンビリアをモチーフにしたストールやチョウチョ柄のクラッチバッグ、ちょうネクタイなどオリジナルアイテムはどれも南国の風土に映えるものばかり。ファッション性も高く、海外にもファンが多いというのも納得だ。
「昔の高級品を、現代の私たちが日常でさらりと使いこなすなんて、すてきじゃないですか?」とほほ笑む崎枝さん。姉妹の創造力にかかれば、紅型の可能性は無限に広がる。
感性光る若手の活躍
今年8月から県工芸技術者育成プログラムの工芸縫製研修を受講している高橋愛さん(33)は「沖縄の工芸品は奥が深く、知れば知るほど引きつけられる」と話す。
革と織物を組み合わせた小物を得意とする高橋さんの最新作は、フリルやハートの型を施した、遊び心たっぷりのハンドバッグだ。さりげない首里織や花織の使い方にセンスが光る。いかにも工芸品というのではなく、おしゃれを楽しむ若者にも普段から使ってもらえるようなデザインを心掛けている。
ネットを駆使して海外での展開にも挑戦したい-若き作り手の言葉の一つ一つに、アイデアと意欲がみなぎっている。
文・當銘千絵
写真・具志堅千恵子