image

海洋漂着廃棄物が深刻な西表島の中野海岸(山口晴幸氏提供)

 

沖縄県の八重山諸島や宮古島、与那国島の海岸で、有害液体などが残存している廃ポリタンクや水銀を含む管球類廃棄物などの危険な有害物質を含む海外からのごみの漂着が、深刻な状態であることが7日までに分かった。1998年から琉球列島の実態調査を続けている漂着ごみ研究家で、県海岸漂着物等対策推進協議会座長の山口晴幸防衛大名誉教授(69)がこのほど、20年分の調査結果をまとめた。山口座長は、景観悪化や海浜域に生息する動植物生態系へのリスクを指摘し、「海洋越境廃棄物の軽減・防止対策の強化が急務」だと警鐘を鳴らしている。

 

調査は1998年から2017年にかけて、北部の伊平屋島から最西端の与那国島に至る県内18島、延べ837海岸で実施。漂着廃棄物の中でも撤去処分が困難な危険・有害・粗大廃棄物9種類を選定し、個別にその実態把握を試みた。

 

内訳は電球・水銀ランプ類が2万5507個で最も多く、次いで蛍光灯管類が8205個、医薬瓶類が3674個、韓国製ポリタンク類が1020個だった。その大半は石垣、西表、宮古、与那国の4島に集中していた。そのほか4島には、タイヤ類や注射器類、ドラム缶類の漂着も目立った。

 

医療廃棄物の中には、針が装着された注射器や血液のような赤褐色の不明液体が残存した医薬瓶など、感染リスクが懸念されるものも見つかった。山口座長は特にプラスチック素材の注射器類は構造的に軟弱で、漂流・漂着中に破損・破片化するものが大半だと指摘し、「主な食物連鎖の場である砂浜や干潟、湿地水域の海生生物への感染リスク」を懸念した。

 

廃ポリタンクの大半は韓国製が占め、2〜3割に液体の残存が確認された。中には鉛やヒ素など有害元素が高濃度で溶存しているものや、発泡性や臭気性の高い危険な液体もあった。過去10年の調査で確認した廃ポリタンクの総数1020個のうち、405個が西表島に集中していた。

 

調査を踏まえ山口座長は、沖縄で確認した海外漂着廃棄物の大半が中国や韓国など、近隣アジア諸国から流れ着いたものだと指摘する。国家間で共通認識を持ち取り組むことが最も望ましいが「現状では迅速に発見して回収除去する以外に有効な対策はない」という。豊かな自然環境が資本の沖縄にとって海岸は「生命線」であり、ないがしろにすると経済面での打撃も受けかねないと忠告。その上で「県や関係自治体が海岸漂着ごみの専門組織を設けるなどし、もっと真剣に取り組むべきだ」と訴えた。(當銘千絵)

 

関連カテゴリー:
関連タグ: