第11話 ある日突然

この映像ブログで何回も母の行動、言動は全く予想がつかない、と書いてきた。そして、その事が、この映画を確実に面白いものにするだろう、という確信を持っていることも書いてきた。

私は、劇映画でもドキュメンタリー映画でも、予定調和的なストーリー展開を最も毛嫌いする!先が読めてしまうストーリー展開は、ストーリーの中に入り込めず、たとえその映画がよく出来ていても、楽しめないからだ。だから、自分では、そんな映画は、絶対に作りたくない、とまあ、日頃から心がけ、前作3作品もそうしてきたつもり。

さて、この新作を撮る前は、<認知症の母をさらけ出す>ことになる、と私も周囲の仲間たちも考えていた。そして、その一線を踏み越えなければならない監督のハードルの高さを考えてきた。もちろん、それはそれで間違ってはいないと思うが、数ヶ月間、母の撮影を続けてきた私は、今思う。

私が、勝手に粋がって考えるハードルの高さなんて、とっくに吹っ飛ばされてしまった、と。

母は、今や本能で生きる人間であり、私の監督としての<思惑>なんて毎回踏みにじり、ハードルを私が感じていればいたで、それもお構いなく蹴っ飛ばしてくるのである。

言い換えると、母のあまりのスゴさ、面白さに監督の私は、完璧に受け身になっている!いや、受け身どころか、オロオロしたり、爆笑したりしているに過ぎない。現に、カメラを持っている両手が、大笑いのため、上下に揺れるほどで、プロ意識がないのもはなはだしい!!

imageそんな日常生活の続く、4月の冷たい雨が降るある日、我が家の玄関が、鳴った。玄関のベルに反応しない母に代わって(母は、玄関に出ると詐欺に合うと思い込んでいるらしい。)玄関に出ると、珍しく母宛に荷物が届いた。

判を押し、荷物の送り状を見てみる。

あれっ、母が、郵便局から自分宛に荷物を送っている??しかも自宅の電話番号が、メチャクチャ!!

イヤ〜な予感がした。

 

ドキュメンタリー映像作家 関口祐加 最新作 『此岸 彼岸』一覧

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 関口家でも使っている、家族を守る”みまもりカメラ”

 

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