「なかなかご一緒できる機会がなくて。こうしてゆっくりお話しできるのは、約30年ぶりですね」

 そう語るのは、隔週連載『中山秀征の語り合いたい人』第31回のゲスト、X JAPAN・ボーカリストのToshI(49)。ときに激しく、ときに透き通る伸びやかな美声で多くの人々を魅了する。Xデビュー前からの旧知の仲だという2人のぶっちゃけトーク、スタートです。

中山「人気絶頂で、X JAPANが解散。ToshIの洗脳騒動がありましたよね。あの騒動は何だったの?」

ToshI「結局、僕がX JAPANのボーカルとして、自信がなくなったことが原因です。X JAPANは海外に進出するのですが、僕は『自分が海外で通用するほど力はない』という不安がありました。さらにその裏で僕が実家と金銭トラブルがあり、帰る場所がなくなった。家族や周りの友人など信じていたものすべてが豹変し、崩れ去り、人間不信になっていったんです。僕の弱さも一因だったと思うのですが……」

中山「普通の生き方をしていたら、家族も周りの人もそうならなかったかもしれない。自分がスターになったばかりに……と自分を責めていたんですね」

ToshI「周りだけではなく、自分さえも信じられない非常に不安定な中で、元妻に出会い、結婚し、自己啓発セミナーに連れていかれました。最初は不信感もあったのですが、信じている元妻に引きずられて、その団体にどっぷり深みにハマってしまいました。『所有することは醜くエゴイスティックで、オマエを苦しめる要因だ』と、暴力と罵倒で徹底的に刷り込まれ、10億円以上を注ぎ込みました。彼らは僕の思考能力を落とすために眠らせず、暗い中で罵倒や暴力を繰り返し浴びせました。心身ともに弱りきっているところを支配する。そうしたことが12年間続いたんです」

中山「その団体から抜けられたのは、どういう経緯があったんですか?」

ToshI「X JAPANの再結成が大きいですね。そもそも『X JAPANは諸悪の根源で、日本中の若者をダメにした悪魔。僕はその首謀者』だと徹底的に洗脳されていた。しかし、再結成の契約金の話がバレたら、その団体の主宰者が態度を変え、再結成をしろと言う。僕はどうしても納得がいかなかったんですね。それまでは口答えしたこともなかったのですが、主宰者は『ヤクザに売り飛ばす。オマエを売れば3億くらいになる』と、裏社会と関係があるとチラつかせてきた。とにかくここから逃げないといけないと危機感を抱いたんです」

中山「どうやって逃げられたんですか?」

ToshI「僕がそんなどん底の状態にあったときに、アメリカにいたYOSHIKIからちょうど連絡があったんです。『X JAPAN再結成のために、衛星回線をつないで、即日レコーディングをしてほしい』という話でした。レコーディングをするためにこっそり出かけたのですが、その団体に捕まってしまったんですよね」

中山「捕まってしまったら、また罵倒と暴力がさらに悪化したのでは?」

ToshI「僕はそのころ、心身ともに疲弊して、じんましんが出て、それをかきむしって全身が血だらけでした。咳が止まらず呼吸が苦しく、頭痛や耳鳴りもひどかった。逃げても捕まってしまえば、さらにひどい暴力を受けるという恐怖心もあり、イベント会場で倒れてしまった。そこで、僕は運ばれた病院からイベント会社の社長の手を借り、脱出するんですね」

中山「その方に出会えてよかったですね。社長さんに感謝ですね」

ToshI「僕はその団体の実情はまったく知らなかったのですが、ほかにも詐欺でお金を搾取されていた被害者がたくさんいたんです。僕は広告塔に利用されていたので、団体側として認識されて仕方ない立場だった。それにもかかわらず、同じ被害者として温かく迎えてくれて……。僕と同じような被害に遭う人が少しでも減るよう、この12年間の経験を多くの人に伝えていきたいとも思っています」

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