「松野さんは芸能活動と勉学を両立したいということで、立派にそれをやり遂げていました。もちろん、卒業検定もちゃんとパスしています。仕事で出席できない授業もありましたが、自習やレポート提出で補って、しっかり単位を取れていましたね。この春、元気で卒業するはずだったのに……残念です」
2月8日に急逝した、人気アイドルグループ・私立恵比寿中学の松野莉奈さん(18)。その学校生活の様子を、松野さんが通った都内私立高校の教頭先生が悲痛な面持ちで語ってくれた。
松野さんは、7日に体調不良で音楽イベントを欠席。自宅療養中の8日早朝5時ごろに容体が急変し病院に救急搬送されたが、意識が戻らないまま死亡が確認された。2日後、所属事務所が死因を『致死性不整脈』の疑いが強いと発表している。
松野さんは、病弱の身を押して頑張ってきた努力家でもあった。以前、雑誌のインタビューで、彼女は自分の体調についてこう語っている。
≪3歳のときはけいれんを起して、あと3分病院へ行くのが遅かったら大変だったって、お母さんが言っていました。私、体が弱くて入院ばっかりで、たぶん運動神経も悪かったし、しかも不注意で周りをよくみていないというか、そういう子どもでした≫(『B.L.T』15年12月号)
冒頭の恩師でもある教頭先生は、松野さんの“異変”についてこう明かしてくれた。
「松野さんは、高校に入学したころの健康診断で不整脈があると診断されました。その後も学年が上がるごとに不整脈の診断が出て再検査を受けていましたが、体育の授業も普通に受けていたほど日常生活に支障はなかったのです。学校としては健康管理を万全にしてきたつもりなので、こういうことになって胸を締め付けられる思いです」
恩師の証言によれば、不整脈の持病を抱えながら芸能活動を続けてきた松野さん。しかし、彼女の仕事に取り組む姿勢はいつも全力だったと音楽関係者は語る。
「とても努力家で、ライブではラップのパートを担当することが多かったのですが、練習を繰り返し、歌唱力やダンスなどパフォーマンス力が年々高くなっていると、ファンの間でも評判でした」
将来を期待された彼女だったが、突然の病魔に人生は暗転してしまった。彼女を突然襲った“致死性不整脈”とはどんな病気なのか――。循環器が専門の内科医で、さがみ生協病院の牛山元美先生に聞いた。
「松野さんは持病が悪化して致死性の不整脈が発症したのでしょう。なんらかの要因で心臓の下部にある心室が異常な速さで動く状態が30秒以上続くと、心室がけいれんを起す心室細動の状態になって、死に至るのが『致死性不整脈』です」
厚労省の人口動態調査(15年)によると、10代の死因の第4位が“心疾患”でこの中には不整脈による死亡も含まれている。自分の子供を不整脈による突然死から守るためにはどうすればいいのだろうか。
「お子さんが突然、けいれんを起こしたり、失神したりする場合は致死性不整脈が隠れている場合があるので専門医の診察を受けてください。運動後に一瞬、気が遠くなる程度の自覚症状があった場合でも検査を受けたほうがいい。ストレスや疲れなどが発作の一因にもなるので、お子さんに疲れた様子が見えたら早めに休息を取らせることも必要です」
松野さんは、シェフの父とパティシエの母に大事に育てられた1人娘だった。
「莉奈さんは幼いころはお母さんのようなパティシエになりたいという夢を持っていたほど、お母さんのことが大好きでした。家族は本当に仲がよく、亡くなる直前の4日から1泊で、ご両親と家族3人で一緒に神奈川県の箱根へ家族旅行に出かけていたんです。お父さんもお母さんも、莉奈さんを可愛がっていました。松野さんが亡くなったあとのご両親の憔悴ぶりは、誰も声をかけられないほどでした」(前出・芸能関係者)
短い生涯を全力で駆け抜けた松野さんの姿を、私たちは決して忘れることはないだろう。