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「映画作りにハマったのは、やはり、デビュー作の『美しい夏キリシマ』ですね。ロケが行われたのが14歳の夏。演じたい、というより『生で映画監督に会える』という目的でオーディションを受けたんです。小学3年生のころから監督になるのが夢だったので。あこがれの映画の現場は、ふだんは味わえない緊張感に満ちていましたね」

 

こう語るのは、放送中の主演ドラマ『コック警部の晩餐会』(TBS系・水曜深夜0時10分〜)で、通称“コック警部”こと、捜査一課特命警部・古久星三(こっくほしみつ)を演じる柄本佑(29)。数々の味のあるキャラクターを演じてきた個性派俳優も、12月で30歳。今回の連続ドラマ初主演にあたり、役者・柄本佑が“個性派で演技派”にたどり着くまでの7作品を語ってくれた。

 

■『美しいキリシマ』(’03年)

 

「初めての撮影現場ですから、覚えたセリフをしゃべるだけで精いっぱい。自分から『ここはこういうふうに演じよう』なんて考える余裕はまったくなかったですね」

 

■『世界の中心で、愛をさけぶ』(’04年)

 

「これは、『テレビドラマって、ありのままの自分が映っちゃうんだな。映画よりも怖いぞ』って感じた作品です。それまでは、セリフだけ入れて、あとは現場へ行ってから監督の演出で動く、という感じだったんですけど、テレビはもっと注意深く演じないとダメだ、と。映画との違いを初めて知った瞬間でした」


■『僕らは歩く、ただそれだけ』(’09年)

 

「一緒にお仕事したい監督のひとりだった廣木隆一さんとの初仕事であり、妻との初共演作。監督とはお酒の席では何度も会っていて、『俺も呼んでください』って頼んでいたんです。でも、いざ呼ばれてみると、すげえ緊張しちゃって(笑)。あこがれの人との濃密な時間は、どの現場よりも充実していました」

 

■『フィギュアなあなた』(’13年)

 

「石井隆監督の現場は本当にきつかったですね。『佑君、何もやらないんだもん。ちょっと芝居つけるね』って意地の悪い言い方しかしないし、やったらやったで、『もう1回できるの?』って。コノヤロ〜!って感じですよ。でも、それが石井さんの演出方法で、愛情表現なのかなあ、と」

 

■『雲霧仁左衛問』(’13年)

 

「NHK大河ドラマ『風林火山』(’07年)で、時代劇は難しいと思い知らされました。少ししか出演していなかったんですけど、声の出し方もセリフの言い回しも、監督から、『時代劇の声じゃない。もっと野太い声で言って』って指導を受けて。でも、数を重ねていくうちに、今では時代劇が大好きなんですよ。『雲霧仁左衛問』は現場を楽しめましたね」

 

■『あさが来た』(’15年)

 

「僕が演じる惣兵衛が失踪中、はつ(宮崎あおい)に賭場で見つけてもらえるシーンは、ターニングポイントになりました。子供の存在も知らされて、はつの優しさと強さに同時に触れたんです」

 

■『GONINサーガ』(’15年)

 

「これも石井隆監督の作品で、前作から19年という監督の執念を感じた現場でした。『フィギュアなあなた』のときもつらかったけど、いつからかそれがだんだん幸せに感じるようになって(笑)。本番中、石井監督の熱のこもった声が飛んでくると、一映画ファンとしては『昔の映画の現場ってこんな感じだったのかな?』ってワクワクしました」

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