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私の母は80歳を超えております。10年前に頭の手術を受けました。無事成功し、幸いにもまだ元気で頑張っております。手先がとっても器用でして、刺繍の先生、木彫りの先生、洋陶器の先生などをやってまいりました。そのなかでも手芸はかなりの腕前。今でもお弟子さんがたくさんいます。「バラの辻」と呼ばれているのよ、と時々、自慢をします。バラの刺繍が得意なんですね。今でこそ、おばあちゃんですが、昔は怖い人でした。よく叱られたものです。怖いけれど、この人にこそ私は才能を引き出されたと思っています。母の才能を見ながら、人間はいろいろなことができるのだな、と思ったものです。

 

父がその才能にやきもちを焼き、彼女を外の世界へは出さなかったので、母が有名になることはありませんでした。しかし、少なくとも私と私の弟は母を見習い、モノづくりをしてきたように思います(弟は陶芸をやっています)。よく叱られましたが、おいしいごはんをいつも作ってくれましたよ。その母親が作ってくれた夜食、学生の頃のいい思い出です。期末試験の最中とか、遅くまで勉強していると、母さんがおうどんとかおにぎりなんかをすっと差し出してくれるのです。家族に支えられているなあ、と思う有り難い瞬間でした。何気ない母親の気遣い。幸せってそういうところに宿っていますね?

 

うちの子も、中学生になってから、遅くまで勉強をするようになりました。父子家庭ですからね、私メが母親になりかわり、お夜食を作って、そっと出してやるんです。すると、「あ、ありがとう。ちょうどおなかすいてたんだ」と笑顔が戻ってきます。「がんばれよ」と頭をごしごししてやって、父は息子の部屋を出ます。翌日、息子が登校した後、空になったお皿を回収します。なんとなく昔を思い出し、ほのぼのする瞬間です。中学生になって、一食増えました(笑)。でも、夜食こそ、実は親子をつなぐ一食なのです。

 

昔、ホテルに缶詰めになって小説を書いていた頃、編集者さんが好物の麻布十番「天のや」のタマゴサンドをよく差し入れてくれました。遅くまで勉強している息子の夜食に最適だと思い、思い出して作ってみたらこれがバカ受け。しかも、残ったら朝食になりますよ。さて、今日はそのお夜食のタマゴサンドを紹介します。

 

材料:全卵4個、砂糖大さじ1、だし醤油大さじ1(白だしと醤油を1:1で合わせる)、ごま油大さじ1、耳なしの食パン2枚、バター15g、塩少々。

 

まずバターをレンジで溶かし、少量をパンに塗っておきます。ボウルに卵4個を割って入れ、そこに砂糖、だし醤油、ごま油半量、を入れてよく混ぜます。玉子焼き器を火にかけ、残りのごま油と少量のバターを入れ、満遍なく広げ、そこに卵液を5分の1ほど落とし全面に伸ばします。箸とヘラをつかい、端っこから卵焼きを作る要領で二つ折りにします。ここで、注意。食パンのサイズの大きな卵焼きを作ることをイメージしてください。最初に玉子焼き器の中に食パンをおいて、大きさを確認しておくのがベスト。あとは卵焼きを作る順序で卵液がなくなるまで繰り返します。コツは空いてるスペースに溶かしバターをたらし、そこに新しい卵液を注ぎ、ヘラで上からかぶせていくと簡単に分厚い卵焼きができます。最終的に通常の倍ほどの平べったい四角いオムレツが出来上がりますので、パンで挟み、卵のはみ出した部分を切り、次に6等分したら、形の揃ってない先っちょをきれいにカットして完成です。

 

お皿に並べてください。なかなかかわいらしいタマゴサンドができますよ。

 

ボナペティ!

 

 

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