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花粉の季節が過ぎればすぐに、夏風邪のシーズン、そして秋のブタクサ花粉……。現代人は、つねにせきやくしゃみに悩まされていると言っていい。しかし、大きな音を出すのは恥ずかしいと、くしゃみをしきらずに途中で止めてしまう人も多いのでは?

 

この“オンナのエチケット”が骨折などのケガや内臓の病気にもつながる超・悪習慣だというのだ。

 

「先日、診察に来た50代の女性は、外出中にくしゃみが出そうになり、とっさに鼻を押さえた瞬間、背中にピキッときたそうです。背骨が圧迫骨折していました」

 

そう話すのは、みずい整形外科の水井睦院長だ。

 

「そもそも、くしゃみというのは、体内に入ろうとした異物を追い出すための生体反射なので、無理に止めてはいけないもの。急に温度が下がったときにもくしゃみが出ますが、これは筋肉を一時的に収縮させ、体温を上げるために起きます。くしゃみは、私たちの体を守るためのシステムなんです」(水井先生・以下同)

 

無理にガマンすると、体内への異物侵入を許すより怖い副作用が生じるという。水井先生に詳しく聞いた。

 

■くしゃみで起こる背骨圧迫骨折

 

「たとえガマンしなくても、くしゃみをした拍子にギックリ腰になったり、尿モレをしたりというのはよく聞きますよね。くしゃみは突然、したくなるものですが、くしゃみの運動量は激しい全身運動をしたときと同じくらいあるんです」

 

ただでさえストレスのかかるくしゃみを手や口で押さえてガマンすると、体への負担は激増する。その負荷は、そのまま出す場合の20倍以上になることもあるという。

 

「くしゃみをガマンすると、外に出られなかったエネルギーが体内への負荷となり、冒頭の患者さんのように『背骨圧迫骨折』を起こすことも。特に、閉経後の女性はカルシウムが不足し、骨粗しょう症やその予備軍が多い。スカスカになった骨はくしゃみの圧にも弱くなっているので、注意が必要なんです」

 

背骨圧迫骨折は気づかないことも多い。放置すると胃や食道にも圧がかかり、胃液が逆流する逆流性食道炎の原因にもなる。さらに心臓なども圧迫されるので、心不全のリスクも高まるという。

 

■原因不明の不調のモト脳脊髄液減少症

 

圧がかかるのは内臓だけではない。本来、体外に放出するはずだった風圧が、耳や鼻腔、上顎洞、脊髄などに逃げてしまうと……。

 

「耳が聞こえづらくなる原因になりますし、ひどい場合には鼓膜が破裂することも。そして、さらに怖いのが『脳脊髄液減少症』です。脊髄に圧がかかって穴が開き、そこから髄液が漏れてしまうのです。頭痛、吐き気、めまい、耳鳴りなどを引き起こします」

 

脳脊髄液減少症は、エックス線検査やMRI検査では見つけることができない。整形外科・脳神経外科で受けられるシンチグラフィー検査でしか発見できない病気なのだ。長く原因不明の頭痛やめまいに悩まされている人は、一度、受診してみよう。この脳脊髄液減少症も、男性より女性、そして特に40代以上で起こりやすい。

 

「女性に多い『ストレートネック』の人は特に注意してください。首が細長く丸みがない場合、くしゃみの衝撃が脊椎に行きやすいんです。無理にガマンすればさらに衝撃が増し、脊髄に穴を開けてしまいます。脳脊髄液減少症の症状は更年期障害の症状とも似ているので、40代以上の女性は気づきにくいという側面もあります」

 

ほかにも、ヘルニア、腰痛、ひどい肩こりや、過去に交通事故でむち打ち損傷になったことがある人も、脳脊髄液減少症のリスクが高くなる。

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