婚活女子:音羽 ヒカル子

30代前半、独身、彼氏ナシ。絶賛婚活中だが、ナポリタンを愛するあまり、ナポリタン以上に愛せる彼に巡り合えない私。そんな私は、とりあえず気になった男性とデートを重ねる日々を繰り返すが……。はたして私は、愛するナポリタンを超える理想の相手と結ばれることができるのか!?

「ナポリタンより魅力がない人、ナポリタンに対する私の思いを理解してくれない人、そしてナポリタンに対して敬意を払わない人はアウトなんです。」

■■今回の妄想彼氏(仮)■■

性格:不思議系年下(大学院生)

外見:童顔、細身

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「今日は天気がいいなぁ」部屋の窓際に寝転がり、天を仰ぐと青空がいっそう青く見える。いつもより遅く起きた今日は、だらだらと時間を過ごす。洗濯機の“ピー”という合図でむっくりと体を起こし、気だるく洗い終えたばかりの洗濯物をベランで干していると、鼻をくすぐる“ある香り”が……

 

「これはまさか……ナポリタン!!」

 

花粉症で鼻が悪くても、“ナポリタンの香り”は嗅ぎ分けられる自信がある。隣の部屋から漂う美味しそうな香りで一気に目が覚めた。ナポリタンの甘いケチャップが焦げる匂いには、どうしても反応してしまう私。1人でいるのにテンションが上がっちゃう(笑)。

 

そっか、もう昼時になるのか。

「今日、朝から何も食べてないや」何かを思い出したかのように急に正気に戻る。

 

「私もナポリタンが食べたくなってきた♡」ナポリタンの香りにやられた。単純にナポリタンを食べたくなってくる。それに、今日は天気もいいことだし、ナポリタンだけを食べに行くんじゃなくて、どこかにもついでに行きたいな。完全に思いつきのプランで行動しているけど(笑)。

 

来てくれそうなメンズは……「あの子だ!」

 

直感で思いついた、現役大学院生の“不思議系”な彼。

唯一、私が認めた“ナポリタン好き”な彼なんだよね。若いのに、“ナポリタン好き”ってなかなか珍しいよね。そして、なぜか“ナポリタン”のことについて妙に詳しいんだ。だから、今回はナポリタン好きな彼と一緒に久々にナポリタンデートをしたいなぁ。早速、PCを開いてメールで連絡してみる。(彼って携帯持ってないんだよね。だから、いつもPCメールなんだ笑。やっぱり、ちょっと不思議。)

 

「ナポリタン食べに行こうよ。急で悪いけど、今日って時間ある?」

 

いつ返事が来るか不安になるけれど、意外にも、返信が早い彼。

 

「もちろん暇なんで、行きましょう。上野がいいな」

 

“もちろん”暇なんだ……(笑)しかも“上野”指定。いろいろな“?”が私の頭の中を駆け巡る。捉え所のない彼に困惑気味。それはさて置き、彼とナポリタンデートができるから文句は無しにしよう。

 

「ありがとう。じゃあ、14時に上野駅で待ち合わせね」

 

待ち合わせ時間ちょうどに到着。彼もほぼ同時で、少し遅れて登場。実は、彼とは以前にも“ナポリタンデート”をしたことがあるんだよね。“ナポリタン”が2人の共通点だと、何かと誘いやすい。すると、彼が到着してすぐに

 

「あの……いきなりなんですけど、どうしても上野動物園に行きたいなぁ……なんて思っていまして……」

 

と、唐突に彼からの要望が飛び出す。理解できない私は、問い返してみた。

「本当にいきなりだね(笑)どうして動物園……!?」

 

「最近嫌なことがあったから、パンダに癒やされたい(笑)」

 

「へぇー……」

 

と困惑気味で返事を返す。とりあえず、 “ナポリタンデート”で上野動物園に来ることに。彼はパンダのブースを目指して足を速める。

 

「すごい!久々に本物見た!やっぱりパンダって可愛いね!!」幼い子どものように、パンダを見てはしゃぐ彼。

「そんなにはしゃぐことかな(笑)たしかに可愛いけどさ……」

 

なだめる私を横目に、彼はパンダを一目見て満足したのか、「そろそろお腹も空いたことだし、ナポリタン食べたいな」と切り出した。上野のお店に詳しくない私たちは、雰囲気のある喫茶店『珈琲 丘』の文字が目にとまり、とりあえず入ってみることに。

 

『珈琲 丘』は、駅から徒歩4分の老舗喫茶店。地下にある店内は、白熱灯のランプが灯り、柔らかな雰囲気。2人は、店内端にある2人席に座る。

 

メニューに目を移すと、“ナポリタン600円”の文字が。彼が“どうしても食べたい”と言うので、つけ合わせのエビフライも注文。

 

注文してから、およそ5分ほどでメニューが運ばれてくる。あまりの提供の早さに2人で驚く。

 

「早っ!!」

「“ナポリタン慣れ”してるんだよ。きっと」

 

私は思わず彼の返答に吹き出す。

「ふふっ。どういう意味それ!?」

すると、彼は

「だから、店主はナポリタンを作り続けて云十年~とか、ここのお店はとにかくナポリタンが名物で定番メニューなんじゃないのって意味。」

と、まじめに返して来た(笑)。ちゃんとしているんだか、謎キャラなのかよく分からない。まぁ、そういうところにちょっと惹かれるんだけどね。

 

太麺にケチャップ・ソースが絡んで優しい美味しさ。まさに喫茶店の味。お皿もレトロな銀皿で、フォークには白の紙ナフキンが巻いてあるところもまた昔ながらの風情があってでステキ。炒めがしっかりしているナポリタンは香ばしさをより強く感じるんだよね。そして、まさに“喫茶店”のナポリタン。そして、この店ならではの特徴は、粉チーズでもパセリでもなく、“青海苔”が麺の上にふりかえられているところ。ほんのり磯の香りが感じられところが新鮮。想像以上にクセになる味でおいしい!

 

すると、彼がここでポツリと一言。

「ナポリタンに青のりなんて、ありえないよ」

「え、どうして?美味しいよ!とりあえず食べてみなよ」

 

促すものの、彼は断固として拒否。こういう彼の姿は初めて。ナポリタンがきっかけでこんな事態になるなんて!頑なに挑戦しようとしない彼に私はついイライラしてしまう。

 

「本当に美味しいから!だって、青のりが乗っているなんてなかなか無いじゃない」

「それが嫌なんだよ。俺が思うナポリタンは、ウインナーとピーマンとマッシュルームしか認められないんだよ」

と、意固地になって意見を曲げない彼。そんな彼に、私もムキになってしまう。

どうしてナポリタンの新しい味に挑戦しようとしないの!?食べてみなきゃ美味しいかどうかわからないじゃない!そもそも、ナポリタンの具に固定観念もっていたら“ナポリタン”の世界が広がらないじゃない!あなたも“ナポリタン好き”なんでしょ!?だったら、“ナポリタン”の視野広げてみなさいよ!!」彼の態度に怒りが込み上げてきて、私はキツく彼に当たってしまった。

 

すると、彼は「そんなに怒ることないじゃん……」とうつむき、すっかり意気消沈の様子。これは、やりすぎた……と私も反省。2人で一緒に食べたナポリタンが、初めて味気なく感じた。

 

「また、次を探すか」

 

こんなに頑固な彼にちょっと幻滅。ナポリタンは、やっぱり楽しく美味しく食べなくちゃね。

今日のヒトミコト『妄想を繰り広げる女性記者ヒトミのTwitter連動コラム』  @hitominapoli

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今回訪れた『珈琲 丘』のナポリタンは、まさに“変化球”ナポリタン。

パセリが散らしてあるナポリタンはよく見かけますが、“青のり”がトッピングされているナポリタンはなかなか出会うことがないですよね!私も今回、初めて味わうことができました。

パセリとは違い、“青のり”特有の磯の香りがナポリタンとよく合います。新感覚のナポリタンを食べたい方はぜひご賞味あれ!

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