「今のうちに買ってしまおうと思う人が多いと思いますが、住宅に“買い時”はありません」と話すのは、ファイナンシャルプランナーの中嶋よしふみさん(以下同)。低金利、住宅ローン減税、消費増税前……「住宅を買うのは今だ!」と思ってしまいそうだが、どうやら違うようだ。では、いつ買ったらいいのか?そもそも、永遠のテーマでもある、持ち家と賃貸、どっちが“お得”なのか?
「買っても借りても、費用的に大きな違いはありません。よくある持ち家と賃貸の比較では、支払い総額で比較されていますが、いちばん大きな“支払いできるかどうか”というリスクを無視しています。メンテナンスや建替えなどにかかる費用が考慮されていない場合も。持ち家は資産だという話もありますが、住宅の購入は不動産投資。絶対に儲かる投資ではありません」
持ち家は40〜50年で建替え費用や修繕費が必要になるため、家賃の前払いであるということを忘れてはいけない。家を買って何百年ももつというわけではないのだ。そして、『いつでも売れるか』『いくらで売れるか』『貸し出せるか』という、住宅購入後の流動性にも注目したい。ここにもリスクが潜んでいる。
「いつでも望む値段で売れたり、貸し出したりできるのであれば買ったほうがいいですけど、それは難しい。不要になった際に買い手や借り手が長期間つかない可能性もあります。この空白の期間にも毎月の返済額、管理費・修繕積立金、固定資産税などの費用がかかります」
現在の首都圏の空室率はおよそ10〜20%。20年後には30〜40%に上昇する可能性があるという。中嶋さんは流動性に関してのメリットとデメリットを次のように解説する。
【持ち家】
メリット
・なし
デメリット
・引っ越しが容易でない
・転勤時に困る
・家族構成など生活に合わなくなったときに困る
・給料が減ったときに返済が苦しくなる
・不用になったときに売却や貸し出すことが容易でない
・不動産価格がさがると、評価額で損をする
【賃貸】
メリット
・引っ越しが容易
・ライフスタイルに合わせて部屋のサイズ、間取り、場所を変えられる
・給料が減ったときには安いところに引っ越すことができる
・収入が極端に減ったときでも実家に戻ることで家賃をゼロにできる
デメリット
・なし
「結局、持ち家は、将来住宅を買い替えることができたり、(借り手や買い手がつかない)空白期間があっても困らない、というような資産に余裕のある人向けなのです」