「東京の代々木公園を訪れた人を中心に66人(5日現在)のデング熱の患者が出ましたが、幸い重症化した例はありません。でも、私は楽観はしていません。デング熱には4種類の型が存在しますが、今回は幸い、1つのように見えます。複数の型に同時に感染してしまうようなことがあると、血小板や白血球の数値が下がり命の危険もあるデング出血熱へと、重症化する恐れがあります」

 

そう語るのは、海外の感染症に詳しい「おおり医院」の大利昌久先生。デング熱で怖いのは、致死率50%というデータもある、重症化した「デング出血熱」だ。衛生管理の行き届いた日本。だが、デング熱のほかにも、新しく上陸する感染症の恐怖はそこまできているという。そこで、大利先生と国際感染症センターの馬渡桃子先生に解説してもらった。

 

【ウエストナイル熱】

「いま、いちばん懸念されています。横浜市衛生研究所では感染拡大を未然に阻止するため、定期的に市内で捕獲した蚊にウイルスがないか検査しています。感染経路は不明です。感染者の150人に1人が重症化するといわれ、髄膜炎や意識障害などの症状が出る、ウエストナイル脳炎を引き起こします」(大利先生)

 

’12年、全米での感染者数は5千674人(死亡286人)。ワクチンも治療法もなく、対症療法しかない。

 

【マラリア】

「アフリカ、東南アジアで蚊が媒介する感染症。発症して4〜5日で治療しないと重症化します。ウイルスを持った蚊が飛行機で運ばれ、空港で感染者を出す『空港マラリア』は過去、日本でも起こっています」(大利先生)

 

【黄熱病】

「日本で感染者はいまだ出ていません。アフリカ、南米などの流行地に立ち入るときは、ワクチン接種の証明書が必要です」(馬渡先生)

 

万全の検疫体制が敷かれているが、常に注意は必要。

 

「感染の危険性があるブラジルに立ち入るときには、証明書は要りません。ですが、’16年、ブラジルではオリンピックが行われ、世界中から人が集まるので心配です」(大利先生)

 

ブラジル国内の渡航先によっては、ワクチンを接種しておくほうがいいようだ。

 

【はしか】

「今年に入ってフィリピンで大流行して、東南アジアに広がっています。日本の感染数も、例年より多いのではないでしょうか。子どものころにはしかを発症したり、ワクチンを接種した人は安心ですが、なかには予防接種をしていない人もいます。妊婦さんがかかると流産の危険性もあります」(馬渡先生)

 

【日本脳炎】

「発症後の死亡率がかなり高く、治療法はない病気です。とくに、北海道の人が移住するときは注意が必要です」(馬渡先生)

 

媒体する蚊が少ないという理由で、北海道ではワクチン接種が自己負担だったが、公費負担にしようという動きも。

 

【破傷風】

「40代後半より上の方はワクチン接種をしていない世代なので、注意が必要。筋肉の痙攣などが激しく、治療を始めて3〜4週間で改善しますが、社会復帰するには1年ほどかかります」(馬渡先生)

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