image

 

「全国の書店さんとのつながりを生かし、各地域で特に売れている本を集計してみると、その地域性が色濃く出るユニークな結果になったんです」

 

そう話すのは、日本最大級の本の通販サイト「e-hon」(トーハンプラットフォーム事業部)で、地域別の人気本ランキング『ニッ本ベスト』を手掛けた田中秀和さん。’13年11月から月1度更新されるランキングは、全国的なベストセラーやガイドブック本を除いて、各地域で人気の書籍を取り上げたもの。同じ担当者の上村奈緒子さんが、ランキングの特徴について解説してくれた。

 

「広島東洋カープに代表されるご当地スポーツの本が多いのですが、なぜかサッカーより野球本が人気です。また、その地域出身や在住の作家の作品、坂本龍馬、西郷隆盛など、その地域ゆかりの偉人についての本も根強い人気です。ほかに地域への愛情の裏返しともいえる“自虐本”、ディープな雑学本と、そのエリアごとに、地域で愛されているものが見えてきます」

 

今回、本誌がセレクトのご当地人気本と地域の傾向について、“本の達人”田中さんと上村さんが、解説してくれた。

 

■近畿『大阪の秘密』(編・博学こだわり倶楽部/河出書房新社KAWADE夢文庫)

 

食や名所、大阪弁の謎まで、人情に熱い大阪をめっちゃディープに紹介。

 

「大阪の街の魅力を深堀りする雑学本が多く出ています。京都では、『祇園祭のひみつ』(白川書院)などお祭り本や、町歩き本が人気。また阪神、近鉄、南海と私鉄も多いことから、『阪急電鉄 スゴすぎ謎学』(小佐野カゲトシ著・河出書房新社)など鉄道本も多彩。阪神タイガース関連本はもちろん、’13年からスタートした、大阪の書店と問屋が選ぶ『大阪ほんま本大賞』から毎年ベストセラーが出るのも特徴です。第一回受賞作の人情もの『銀二貫』(高田郁著・幻冬舎)もロングセラーになっています」


■中国『うえむらちかのカープごはん。』(著・うえむらちか/ザメディアジョン)

 

3世代にわたる生粋のカープ女子の著者が、カープファンに愛されるグルメを紹介。

 

「中国地方では先日、37年ぶりのリーグ連覇を果たした広島東洋カープをおいて語れません。特に強さを増した2年前から、関連本はベストセラーランキングを独占しています。ほかには、’13年に60年ぶりの大遷宮が行われた出雲大社の関連本も、多く出版されました。神話の世界の『写真集 出雲国風土記紀行』(島根県古代文化センター編・山陰中央新報社)は今でも人気です。もう一つ人気を博したのが、山奥の地酒から世界的ブランドになった獺祭に関する本。多くの人に読まれています」

 

■四国『ごめんなさい』(著・サトシン/イラスト・羽尻利門/ポプラ社)

 

徳島在住の羽尻利門と絵本作家サトシンが徳島の読み聞かせ会で出会い誕生した、家族の温かさを感じられる絵本。

 

「地元徳島から、感動の輪が広がり、全国へと広まりつつある珠玉の絵本。作家と書店さんが『四国発で売っていこう』と力を入れています。テレビアニメにもなった篠丸のどかの漫画『うどんの国の金色毛鞠』(新潮社)などのうどん本や、坂本龍馬がこれまではポピュラーでした。今年は、4月に亡くなった歌手ペギー葉山さんの代表作『南国土佐を後にして』の誕生秘話をつづった『奇跡の歌』(門田隆将著・小学館)など、感動ものが多く誕生しています」

 

■九州『よか人生って、なんじゃろな』(著・山本英照/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 

福岡のお寺の和尚が紡ぐ名物法話。厳しくも温かい言葉に5万人が感動したという。

 

「九州ご当地本の特徴は、暮らしに密着していること。和尚さんの法話も、檀家さんとの交流で生まれたものです。しいたけに特化した『大分県のしいたけ料理の本』(神谷禎恵、小坂章子著・西日本新聞社)も話題。熊本地震を経験し、人の温かさ、ごはんのあったかさを描いた『ひさいめし~熊本より~』(ウオズミアミ著・マッグガーデン)、温泉を舞台にした、別府在住の作家澤西祐典の小説『別府フロマラソン』(書肆侃侃房)も人気。来年の大河ドラマの主人公、西郷隆盛の本も売れています」

 

■沖縄『あなたのなかのやんちゃな神さまとつきあう法』(著・金城幸政/サンマーク出版)

 

沖縄の「人生を変えるスピリチュアル講師」が教える、悩みを解決する方法を紹介した本。

 

「スピリチュアル本が人気の沖縄で、昨年からランクインしているロングベストセラーです。もう一冊、沖縄のロングセラーは、’91年、’92年と沖縄水産高校を夏の甲子園2年連続準優勝に導いた名将、栽弘義監督のノンフィクション『沖縄を変えた男』(松永多佳倫著・集英社文庫)。これは昨年、沖縄出身のタレント、ゴリ主演で映画化もされたヒット作です。琉球の文化を掘り下げた本や、基地問題の関連本もランクインすることが多いですね」

 

秋の夜長に、旅するように読書できる一冊に出合ってね!

関連カテゴリー:
関連タグ: