「来年度の税制改正に向けて自動車課税の見直しが進むなか、軽自動車税の引き上げが検討されています。電車やバス便の少ない地方では、軽自動車が生活の足。買い物も病院も、車なしでは動けません。1人1台という家庭も多く、税金など諸費用の安い軽自動車は、もはや生活必需品といえます。庶民の生活を無視した増税には、私は反対です」
こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。自動車には多くの税金が課せられている。購入時には、自動車取得税と消費税。業界団体はこれを二重課税だと見直しを迫ってきたが、今年1月の税制改正大綱にて「消費税10%の時点で自動車取得税を廃止する」ことが決定。消費税が現状より5%上がっても、価格の約9割に5%課税される自動車取得税を廃止すれば、買い手には少し負担増でも、景気への影響は少ないだろうとの判断だ。
「ですが、消費税は国税で、自動車取得税は地方税。今度は地方の財源が問題になりました。自動車取得税は年間約1千900億円(日本自動車工業会による)。その代わりの財源として、同じ地方税である軽自動車税と自動車税で調整する案が出ているのです。軽自動車税は7千200円に対し、性能のあまり変わらない小型車の自動車税が2万9千500円。この不公平を是正するために、軽自動車税を引き上げるというのです」(荻原さん・以下同)
軽自動車の販売台数は順調に伸びている。今年度上半期では、新車購入全体の4割を超え、初めて100万台を突破した(日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会による)。売れ行き順調な「取りやすいところから取る」やり方は、発泡酒や第三のビールにかかる酒税のときと同様ではないか。
「スズキの鈴木修会長は11月1日『弱い者いじめだと批判した』と報じられましたが、私は2つの弱者に増税のしわ寄せが集中すると懸念します。ひとつは自動車業界の中でも軽自動車をメインとする会社。また、増税になって車が購入しづらくなったら、鉄道などの交通インフラがあまり発達していない地方の人も、生活は不便になるでしょう。今、必要なのは場当たり的な自動車税見直しや軽自動車税の引き上げではなく、自動車にかかる複雑な税制を根本から再検討することだと思います」