【渡嘉敷・座間味】沖縄県の渡嘉敷島、座間味島で外来種のイノシシによる家畜や農作物への被害が深刻化している。農作物のほかウミガメの卵が食い荒らされた跡も確認され、渡嘉敷村では家畜のヤギも襲われている。渡嘉敷村は、2017年度までに664頭を捕獲。300頭以上が生息していると推測する。両村はわなを仕掛けるなど駆除に取り組んでいるが、繁殖力が強く駆除が追い付いていないのが現状だ。関係者は「わなを設置するにも限界があり、効果的な駆除方法も見つかっていない」と頭を抱えている。
今月初め、県、渡嘉敷村、座間味村など関係機関が集まり、検討会議が開かれた。3者は今後、駆除に向けた計画策定に取り組むとしている。
問題のイノシシは十数年前に食肉用として渡嘉敷島に持ち込まれ、飼育していたものが逃げ出し繁殖しているとみられる。一部は豚と交配してイノブタ化しているという。一方、座間味島では、渡嘉敷から海を渡ったイノシシが島内で繁殖しているとみられる。
渡嘉敷では住宅地での目撃情報があるほか、国の天然記念物「リュウキュウヤマガメ」の卵にも被害が出ているとの情報もある。複数の住民は家畜として飼っていたヤギが被害にあったという。座間味ではことし8月、初めてウミガメの卵への被害が確認された。渡嘉敷島周辺の無人島でもウミガメの卵が食べられた跡があるという。
渡嘉敷村は11年ごろから本格的な対策に乗り出し、捕獲用のわなや田畑への侵入防止柵設置などの対策を講じている。座間味村も被害報告が増え始めた5年ほど前から、渡嘉敷村と同様にわなを仕掛けて駆除を試みているが、効果は上がっていないという。
渡嘉敷島に住む小嶺智治さん(69)は、冬の野菜作りのために準備していた畑を荒らされた。「残念だ。早急に(村に)対策を求めたい」と怒りをあらわにした。弟の智秀さん(66)は、家の隣りにある空き屋に設置されたわなにイノシシがかかり「こんなに近くで捕まるとは」と不安げに話した。
宮城邦治・沖国大名誉教授(動物生態学)は「天敵もおらず、イノシシは島の生態系のトップに君臨していて、駆除が追い付いていない。生態系の攪乱(かくらん)が非常に懸念される」と指摘した。
(米田英明通信員、嘉数陽)