ラップやレゲエが流れ、会場は熱を帯びた。アーティストのメッセージを受け取った若者はその意味を自問した。17日、沖縄県那覇市のパレットくもじ前広場で開かれた「県民投票音楽祭」。「辺野古」県民投票の会の取り組みに多くの若者が集まった。「政治に無関心」と言われる若者の活動が目立った今回の県民投票。その姿が幅広い世代に共感を広げ、沖縄の思いをまとめる原動力になった。
出演したアーティストの一人、CHOUJI(チョージ)さんは「意思を示さないと未来は変えられない。後で文句を言っても、投票に行かなかった自分のせいにさせられる」と呼び掛けた。音楽祭のテーマを象徴するような言葉だ。
音楽祭に参加したのを契機に政治を身近に感じた若者は会員制交流サイト(SNS)に次々感想をつづった。「一人一人意見は違えど沖縄を大切にしようとしていることが大事だと思えた」「大事なのは自分の意思を表すこと。機会を見過ごす? いや行くでしょ」
パフォーマンスによる新鮮な呼び掛けと、SNSによる情報発信が関心を高める相乗効果を生んだ。
投開票日が迫る21日。キリスト教学院大学の学生有志が名護市辺野古のビーチでピクニックを企画し、実行した。新基地建設の話題をタブー視する傾向にある同世代の若者に注目してもらうのが狙いだった。発案者の一人、大城妃南子(ひなこ)さん(21)=浦添市=は県民投票を機に同世代でも話し合える環境にしようと呼び掛ける動画を作り、SNSで発信した。
名桜大学や沖縄国際大学、琉球大学の学生や投票権のない18歳未満の世代も模擬投票や学習会などで基地問題を考え話し合うきっかけづくりに取り組んだ。
日米両政府が米軍普天間飛行場の返還に合意した後に生まれた若者たち。自然と基地問題で対立する大人たちとは距離を置いた。「一方的な賛否の押し付けは若者からすると怖いという意見が多い。若者も向き合いたい思いはあるが、怒りだけでは何も伝わらない」と大城さんは漏らす。
そんな若者が行動した県民投票で示された新基地反対の民意。「すぐに解決するとは思っていない。今からがスタートだと思う。沖縄の思いは全国に発信できた。今後本土の人たちと話し合っていけるかだと思う」と力を込めた。
(謝花史哲)