甲子園出場を夢見て海を渡った2人が、念願をかなえた。全国高校野球選手権大会に5年ぶり8度目の出場を決めた沖縄尚学高の2年生で、台湾出身の崔哲瑋(さいてつい)さん(17)と張博瀚(ちょうはくかん)さん(17)だ。夏の甲子園は小学生の頃からテレビの向こう側にある憧れの舞台だった。夢を実現した2人は、大会に「全力で挑みたい」と奮い立っている。
小学生の頃から同じ野球チームで、台湾新竹市立成徳高級中でも学校代表チームで共に汗を流した2人。甲子園は毎年台湾でも放映され、幼い頃から身近にあった。崔さんは夏の甲子園のイメージを「素晴らしい場所」と語り、張さんは「みんな一生懸命プレーしている。かっこいい」と目を輝かせる。「甲子園に行きたい」という情熱。双方の親も沖縄尚学高への留学に背中を押してくれた。
台湾は秋が学年の替わり目なため、2人は中学卒業後に半年間、県内の日本語学校に通った後、昨春に沖尚に入学した。身元引受人は張さんの父の友人で、沖縄・台湾交流振興会会長の平田久雄さん(69)が快く引き受けた。学生寮では仲間と積極的にコミュニケーションを取り、今は言葉の壁も苦にならない。
崔さんは沖縄大会で全試合スタメン出場し中軸を任され、初戦と2回戦は4番を務めた。毎試合安打を放ち、成績は3割8分9厘、5打点。「初球から打ちにいった」と積極性が生きた。張さんも毎試合スタンドで声を枯らした。優勝を決めた瞬間は「とてもうれしかった」と頬を緩める2人。
親から優勝決定後に「おめでとう」とねぎらう連絡があった。平田さんも「甲子園ではそれぞれの役割をこなし、ぜひ頑張って。野球、勉学を通し、台湾と沖縄の懸け橋になってほしい」とエールを送る。
崔さんは「チームが勝つために自分の力を出し切りたい」と決意。張さんは活躍する崔さんを横目に「悔しい」と本音を漏らすが、甲子園では「絶対勝つという気持ちで声を出したい」と応援に全力を込める。 (長嶺真輝)