那覇市首里当蔵町の首里城の火災で、那覇市消防局は3日、正殿と南殿、書院・鎖之間、二階御殿、黄金御殿(寄満・奥書院)、北殿の計6棟が全焼したと発表した。これまで屋根への延焼が判明していた奉神門に加え、新たに正殿裏手の女官居室の一部壁にも延焼していたことを明らかにした。正殿周辺の計8棟が焼損したことになる。一方、正殿裏手の放水銃は収納庫のふたを開ける専用の工具が必要で、現場から離れた奉神門に保管されていたために使用できなかったことが公園を管理する沖縄美ら島財団への取材で判明した。
市消防はこれまで「調査中」として焼損程度を明かしていなかった。焼損した計8棟の延べ床面積は約5271平方メートル。正殿と北殿の焼損割合は100%で完全に燃え落ちていた。
財団によると、使用できなかった放水銃は2017年度に国が御内原エリアを整備した際に、地上式から地下式のものに変更した。収納庫のふたは専用のハンドルを取り付けて持ち上げる仕組みになっており、火災発生時は監視員が奉神門2階のモニター室から持ち出して開けることになっていた。ただ、今回は監視員が初期消火や消防隊の誘導を行っていたため、対応できなかったという。
放水銃は消防法に基づいたものではなく自主的に設置したため、設置の際に市消防と協議などは行っていないという。財団は「現場検証の結果を踏まえ、関係機関と連携し管理体制が適切だったか検証する」としている。
一方、市消防の担当者は「放水銃は自衛消防隊が初期消火に使用するもの」とした上で「1基使えなかったことが消防の消火活動に影響したかは不明」と説明。火災当初に使用した屋内外の消火栓の水圧が十数分で低下したことについても「地下に120トンの貯水タンクがあるが、いろいろな場所で使えばいつかは尽きる。予想外に早かったかは分からない」と述べた。
消防は正殿北側で火災原因の特定につながる証拠品の発掘作業を手作業で進めている。県警は火元有力の正殿北東で見つかった金属類の鑑定を科学捜査研究所で実施している。