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4月30日、新型コロナウイルスの経済対策として、「特別定額給付金」という1人10万円の一律給付が正式に決まった。早い地域では5月1日からオンライン申請が、青森県西目屋村などはすでに支給が始まったという報道も。

 

「『もうすぐだ』と安心した方もいると思います。ですが、そんなに早くもらえるでしょうか」と話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さんだ。荻原さんが一律給付10万円についての問題点を指摘するーー。

 

■首相の発言とは異なり、多くの場合7月になると覚悟して

 

不安の原因は’08年のリーマンショック、当時の麻生内閣が支給した1万2,000円の「定額給付金」です。実は最近、当時の資料を見て驚きました。給付が決まったのは’08年10月30日ですが、始まったのは早くて’09年3月。もっとも遅い地域は5月28日です。給付開始まで7カ月もかかったのです。

 

今回は安倍首相が「5月中の給付開始を目標」と言うとおり、一刻も早く支給され、’08年と同じ轍を踏まないことを願うばかりです。

 

とはいえ、一律10万円も紆余曲折がありました。安倍首相が「強大な経済対策」に言及したのが3月17日。4月7日には東京など7都府県に緊急事態宣言。所得が激減した世帯などに30万円の給付を決めますが、不公平感などに世論が大バッシング。4月16日、緊急事態宣言を全国に広げたときに、30万円の限定給付をやめ、1人10万円の一律給付になんとか落ち着いたのです。

 

新型コロナウイルスにおびえる生活が始まってもうすぐ3カ月。生活苦に陥る人も増え、3月の生活保護の申請数は東京都足立区や北海道札幌市で前月より3割以上増えています。生活の底支えとしては、今すぐでも早くはありません。

 

ですが実際、一律10万円を手にするのは、残念ながら、人口規模の小さな自治体に住む方か、マイナンバーカードを持つ方以外は、5月中などありえないと思います。

 

マイナンバーカードがない方は、自治体から申請書が郵送されます。それまでに1カ月。振込み先などを記入し返送した申請書が受理され、振り込みまでにもう1カ月。振り込みは早くて6月下旬、多くの場合7月だと覚悟しておきましょう。

 

今回、マイナンバーカードを持つ方はオンラインで申請でき、受給も早いといいます。ただ、マイナンバーカードの普及率は約16%(’20年3月・総務省)。カードを持たない方が今、取得申請で役所に殺到していますが、カードの作成は通常1カ月、今は2カ月かかることも。郵送受付けを待って、三密の役所を避けるほうが賢明です。

 

緊急事態宣言が5月末まで延長され、さらに困窮を極める方が増えるでしょう。そこで提案です。

 

一律給付の受付け期間は3カ月間。以前と収入が変わらない方は申請を少し待ちましょう。困窮している方は申請を急いで、1日も早く10万円を受け取ってください。

 

また、一部で給付金の辞退をすすめる政治家もいますが、辞退しても国の支出を減らすだけ。困っている方を助けたいなら、給付金を受け取り、支援活動を行う団体などに寄付するとよいでしょう。

 

緊急時にこそ、本質が見えます。政治家の発言も注視しましょう。

 

「女性自身」2020年5月26日号 掲載

経済ジャーナリスト

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