愛情を込めて豆腐を作る金城照夫さん(左)、えつ子さん夫妻=国頭村桃原の「やんばる家玉栄」 画像を見る

 

【国頭】「『おいしい』の言葉が一番うれしい」。大豆の香りと湯気が漂う沖縄県国頭村桃原の豆腐屋「やんばる家玉栄(たまい)」で、店主の金城照夫さん(62)は静かにうなずく。妻のえつ子さん(57)と豆腐作りを始め、はや16年。午前2時に起床する生活も苦にせず、日々愛情を込め豆腐を作り続けている。

 

「豆腐屋をやると思ったよ」。ある日親族からそう声を掛けられた。聞くと、照夫さんが幼い頃に病で亡くなった母親も豆腐屋を営んでいたという。「驚いた。母が見守ってくれているようで、縁を感じた」と照れたように話す。

 

元々は建設業に携わっていた。知人からの誘いをきっかけに、1カ月ほどかけ豆腐作りを学び、2004年から屋号の「玉栄」を店名に開業した。前日から材料の大豆を洗うなど仕込み作業をし、毎日午前2時に起きて豆腐作りを始める。

 

にがりとして使う海水にはこだわりがある。地元の漁師らの協力を得て、辺戸岬沖でくんでもらった海水を使用している。口当たりやわらかな島豆腐を作るため、型に入れる際は空気が抜けないようゆっくり丁寧に流し込む。島豆腐やゆし豆腐、豆乳など出来たての商品は国頭スーパーや桃原共同店などに並ぶ。

 

早朝の配達から戻ったえつ子さんは「おいしい、と食べてもらえるだけでうれしい」と笑みがこぼれる。金城さん夫妻は今日もあちこーこー豆腐を届けている。
(吉田早希)

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