「声だけで表現するということは、今までやってきた芝居の中でいちばん難しかったです。仕上がった作品を見ても反省しかありませんが、今後も忘れられない作品になると思います」
そう話すのは、アニメ『サイダーのように言葉が湧き上がる』(近日公開)で映画デビューを飾った八代目市川染五郎(15)。声優初挑戦となった今作は不安が大きかったと振り返る。
「収録のときはまだ変声期が終わってなくて、大きな声や高い声が出しづらいし、自分の声があまり好きじゃなかったんです。でも、そんなときに監督から“たとえお客さまの顔が見えなくても、役の気持ちを伝えなければならないところは舞台と声優は似ている”と教えていただきました。この作品を経験したことは自分の自信につながったと思います」(染五郎・以下同)
少年少女のひと夏の青春を描いた今作では、コミュニケーションが苦手な高校生・チェリーを演じている。
「自分も彼のように人見知りですし、コンプレックスもあります。何より手足が長いところがイヤですね。歌舞伎の舞踊に向かないので。チェリーと違うのは好きな女のコのタイプです。自分は元気でおしゃべりなコは苦手で、物静かで落ち着きのある人が話しやすいです」
プライベートでは絵を描くのが好きだと話す顔は、まだ初々しさが残る。
「小さいころは時間があると歌舞伎の絵ばかり描いていました。歌舞伎が好きすぎるというか、お芝居自体が好きでほかにやりたいことが思いつかない。それに、役者なら、いろんな職業を疑似体験できますしね」
「女性自身」2020年6月2日号 掲載