「おそらく今年の夏のボーナスは、軒並み大幅減か、支給を見送る企業も少なからず出るでしょう。想像もしない大手企業が倒産したり、身近なお店が閉店したり、3カ月後の私たちの暮らしぶりは激変するはずです。そのとき、この現金給付こそ命綱になるんです」
こう話すのは、マネーのプロとして活躍する長尾義弘さん(ファイナンシャルプランナー)。政府の新型コロナウイルス感染症緊急経済対策として、国民一律一人10万円の給付が始まっている。しかし、首都圏や関西圏などでは申請書の郵送が始まったばかり。実際の給付は7月にずれ込む自治体も多いといわれている。
「’08年、リーマンショックのときも、一人当たり1万2,000円の現金給付がありました。非常に中途半端な金額だったこともあり、受け取ったことすら、忘れてしまった人も多いのではないでしょうか。それに比べ、今回は10万円と桁違いの金額。夫婦と子ども2人の世帯なら、総額40万円が世帯主の口座に振り込まれます。なぜ、国がこんな大盤振舞いをするのか。ようするに、この先、日本経済が未曽有の大不況を迎えることを想定した一時金の意味合いでしょう。給付金の額から推測するに、リーマンショックの数十倍の大恐慌が目前に迫っていることは間違いありません」(長尾さん・以下同)
長尾さんの話を裏付けるように、先日はアパレル大手レナウンが経営破綻。トヨタ自動車は5月の決算発表で、今期の業績見通しについて、営業利益79.5%の大幅減と予測。また百貨店大手の三越伊勢丹の4月の売り上げは前年比90.8%減。航空業界のANAは現在、運航予定便の9割以上を運休している。新型コロナ感染のニュースの陰で、コロナによる大恐慌が、ひたひたと、私たちの暮らしに迫っているのだ。
「実際に、すでにコロナ禍で生活が困窮している家庭にとっては、10万円は少しの潤いとなるでしょう。一方、まだ深刻な経済不安に直面していない家庭にとっても、じつは、このお金はこれから3カ月後には、虎の子のお金になる可能性が非常に高くなっています」
長尾さんが教える「10万円給付のやってはいけない使い方」が、次の7つだ。
【1】貯金「今の生活」に使うべし!
【2】投資「いまは損するばかり」と心得るべし!
【3】外食「家族でぜいたく」している場合にあらず!
【4】自分へのごほうび「のんきな考え」は捨て、まだ先にせよ!
【5】家電の買い換え「優先順位」を間違えるべからず!
【6】ネット通販「ポチする誘惑」に勝つべし!
【7】ギャンブル「あぶく銭」と考えるべからず!
意外に思うかもしれないが、長尾さんは、第一に給付金を「貯金」に回してはいけないという。
「万一に備えて、ためておこうと考える人がいちばん多いと思うのですが、貯蓄に回すだけでは、経済はよくなりません。消費することで経済はよくなる。貯蓄も大事ではありますが、大事なのは、お金の生きた使い方です。使い方によっては“生き金”になるし、“死に金”にもなります。給付金はきっちり生活のために使いきってこそ“生き金”になるんです」
国民一律、給付総額14兆円の巨額な給付金は使ってこそ意味があるというのが、長尾さんの考え。
「いまいちばん苦しいのは地元の商店です。商店が立ち行かなくなれば、町全体が地盤沈下します。現金10万円は、とにかく地元の商店で生活必需品を買うことがマストなのではないでしょうか」
せっかく給付された10万円を元手に、投資で増やそうという人もいるだろう。これも危険だ。
「私は持っていた株式を先月の時点でかなり売り払いました。これだけ企業の決算報告が悪く、倒産が相次ぎそうな経済状態では、素人にはまったく先が見通せない。いまは一般人が手を出す相場ではないと思います」
ちなみに、投資信託にいたっては、ほぼすべての商品が下落し、悲惨な状況を呈しているとか。
つぎに、働かないで入ったお金だけに、ボーナス気分で「家族でぜいたくな外食」「自分へのごほうび」に使う人も現れそう。
「ぱっと使ってしまって、翌月、公共料金の支払いが滞るという可能性も否定できないのが、いまの恐ろしいところなんですよ」
また夏のボーナスで予定していた「家電購入」や在宅ストレスから、ついポチッとしてしまう「ネット通販」もNG。
「家電の買い換えは、コロナ騒動が落ち着くまで延期。ネット通販で、5,000円の商品を10回ポチすると、給付金の半分がなくなってしまいます。気の緩みが大敵」
そして、長尾さんが「論外」というのが、パチンコなどのギャンブルにつぎ込むことだ。
「家族の誰かが誘惑に勝てず、使い込みそうなときは、一家全員で止める覚悟を持って。3カ月後の生活苦を見据えると、この給付金は一家にとって、本当に大切なお金です」
この10万円の使い方が、あなたの家計の明暗を分けるかもしれない。ぜひ賢い使い方を。
「女性自身」2020年6月16日号 掲載