「うちのICUのベッド数は20床ほどで、今はほぼいっぱいになっています。第1波のころと同じ状況ですね。人手不足は深刻で、ICUの医師は全員で8人。数カ月、自宅に帰る姿を見ていません。院内でシャワーを浴びて、仮眠を取る生活を続けています。看護師も20人ほどいますが、6月ごろから体調を崩す人が続出しています。そのうち、3人ほどは辞めてしまいました。現場は、すでにギリギリです。これよりも患者数が増えたら……考えるだけで怖くて仕方がありません」
そう語るのは、関西の大学病院で感染部門のICU治療にあたる看護師だ。
8月19日、大阪府での新規感染者数は187人。東京都の186人を上回り、全国最多となった。さらに特筆すべきは、重症患者の数だ。16日、大阪府の重症患者数は過去最高の72人を記録した。これは、東京都の2倍以上という異例の多さなのだ。
また大阪府の専門会議では、さらに驚きのデータも示されていた。大阪府の試算によると、“このままだと9月に医療崩壊する可能性がある”というのだ。
「大阪府が重症患者向けに確保できる病床数の上限は215床だそうです。しかし新規陽性者数が毎日200人前後で続いた場合、9月9日にはこの上限を上回ってしまうのです。以降は重症患者が出ても受け入れられないという、医療崩壊につながる事態が待っています。これは、ゆゆしき事態です。
さらに専門家からは『これから数週間のうちに重症者が週100人以上、死者が60人程度出る』といった予測も出ているそうです。8月21日発表の重症患者数が63人で、総死者数が123人ですからね。そこから一気に感染爆発していく可能性があるということです」(前出・全国紙記者)
20日いっぱいで大阪ミナミへの休業要請が解除。事態はさらに緩和方向へと進んでおり、府外への感染拡大も懸念されている。大阪市住吉区で開業している「いわがき内科クリニック」の岩垣明隆院長はこう語る。
「大阪は地域ごとに文化の特色があって、密集しているエリアも少なくありません。人の交流も盛んで、京都府や兵庫県、奈良県との行き来も多いですからね。そうなるとエピセンター化(震源地化)が起きやすく、大阪から近隣地域へと感染が広がる可能性も十分に考えられると思います」
感染症に詳しい「のぞみクリニック」の筋野恵介院長もこう警鐘を鳴らす。
「今後は、大阪から近隣へ感染が広がることも懸念されます。奈良県の天理大学でも大規模クラスターが発生しましたが、三重県や京都府などでも同様の事態は起きうるでしょう。
そうならないために必要なのは近隣自治体との連携です。東京都は埼玉県や神奈川県と一体となって対策をしています。大阪もこれからは近隣地域と一体となって対策することが重要です。さらにPCR検査数も増やし、事態の把握に努めなければならないでしょう」
「女性自身」2020年9月8日号 掲載