新型コロナ関連の失業者は、’20年1月から通算で9万人を超えた(2月26日・厚生労働省)。コロナ禍では転職もきびしく、お困りの方も多いだろう。そんななか国は、求職者と人手不足の介護業界をつなげようと、4月から「介護職就職支援金貸付事業」を始める。経済ジャーナリストの荻原博子が解説してくれたーー。
■背景には介護職の深刻な人手不足
対象者は、介護職の経験がない転職者。ハローワークが資格取得から就職まで、まとめて支援してくれます。
まず、介護資格を取るための研修が無料で受講できます。研修中も失業手当は止まりませんし、失業手当がない方も、収入要件を満たせば月10万円の給付金や研修のための交通費が支給されます。
研修は2〜6カ月間で、修了後、介護施設などに就職すると、通勤用に自転車を買うなど再就職の準備資金として最大20万円の融資を受けることができます。
さらに、2年間介護職を続ければ、融資の返済は全額免除されるというのです。
背景には介護業界の深刻な人手不足があります。新しい介護職員が、毎年約6万人ずつ必要といわれるほど(’18年・厚生労働省)。
コロナ禍で、感染防止対策などの業務が増え、これまで以上に人材が必要になったこと。また、外国人労働者の受け入れが、むずかしくなったことも大きいでしょう。
4月から始めるのは転職者向けの支援ですが、介護の実務経験がある人に復職を促す「離職介護人材再就職準備金貸付事業」はすでに実施されています。
こちらの対象は介護の資格を持ち1年以上の実務経験があるが、いまは介護業界で働いていない人です。介護に復職すると、再就職準備金として最大40万円の融資が可能。2年勤めれば返済が全額免除されます。こちらは地域の社会福祉協議会が窓口です。
さらに、介護関連では唯一の国家資格である「介護福祉士」を目指す手もあります。この資格を取得するには、3年以上の実務経験者が「介護福祉士実務者研修」を受講したうえで受験するか、あるいは、養成校に2年通って受験資格を得るなどがあります。
早く資格を取得したいから養成校に通いたいが受講料がハードルという方には、「介護福祉士等修学資金貸付制度」があります。
たとえば東京都では、入学準備金20万円と受講費用は月5万円、卒業時に就職準備金20万円、受験費用4万円を、いずれもその範囲内で融資が受けられます。2年制の養成校の場合、融資額は164万円までと高額ですが、卒業後、5年間その地域の介護施設で勤めれば、こちらも全額返済免除となります。
「介護はキツイ仕事」と嫌われがちですが、機械化・IT化が進み、かなり改善された事業所や、また、介護職に就く男性も増えています。求職中の方は、こうした支援をフル活用して介護業界で働くことを、選択肢の1つとして検討してはいかがでしょうか。
「女性自身」2021年3月23日・30日合併号 掲載