「あれっ、これってこんなに高かったっけ!?」。買い物に行って、驚いてしまった経験はないだろうか。長引くコロナ禍で給与が減ってしまった家庭も多いが……。じつは2021年は多くのものの値上げが予定されているのだ。あらかじめ、何が値上がりするのか知っておけば対策も立てられるーー。
「最近、毎月のように『電気、ガスが値上げ』なんてニュースが。ウチは2月の水道光熱費がコロナ前と比べて1.5倍になったんです! 夫はコロナ禍で収入が減ったのに、どうすればいいの……」
50代の主婦が困り果てて話す。今年に入って上がり続けている水道光熱費。だが、値上げはこれだけではない。経済評論家の加谷珪一さんが、次のように話す。
「昨年末のコロナ危機で、全世界的にサプライチェーン(供給の流れ)が寸断され、輸送価格が跳ね上がっています。一方でコロナ後の景気回復を見据えて各国企業が資材や食料の争奪戦を始め、価格が上昇しています。国内では、インフラの老朽化で工事費がかかるにもかかわらず、国や自治体は財政難で追加投資が困難なため、公共料金が上がる。さらに低金利で収入が減った銀行は、手数料などを値上げする。今年から数年先まで、ほとんどの分野で『値上げ』の流れは変わらないでしょう」
値上げになったものは多岐にわたるため、価格の上昇に気づかず、いつの間にか毎月の支出が増えているなんてことも……。また4月からは商品やサービスの価格を表示する際、消費税を含んだ「総額表示」が義務付けされたため、価格の上昇はわかりづらくなった。
すでに何が値上がりしたのか、これから何が値上がりするのか、家計のために知る必要がある。加谷さんに、私たちの生活に直結する「値上げ」を解説してもらった。
■税金・保険料
じつは今年1月に、火災保険は平均4.9%、地震保険は平均5.1%も値上げされている。
「地震保険はここ5年で3回目の値上げなので、今後は当分ないと思われます。しかし火災保険は、災害が全国で多発しているため、近い将来、再値上げがあるかもしれません」(加谷さん・以下同)
4月から介護報酬が改定された。それに伴い介護保険料も“値上げ”になった。保険料は住んでいる市町村によって異なるが、現在の全国平均は月額5,869円。今後は全国平均6,000円以上になると見られる。少なくとも平均で131円超の値上げだ。
「地方ではすでに『7,000円以上』という自治体も多い。次の値上げは3年後でしょうが、高齢化が進む地域では、さらに跳ね上がる可能性があります」
さらに4月からは、給与所得控除の上限額が220万から195万円に引き下げられた。また、給与所得控除の上限額が適用される収入額が1,000万円から850万円に(子育て世帯などは例外)。住民税は控除後の額で決まるので、高所得者は住民税が“値上げ”となってしまう。
■食品
食用油は、大手各社が1キロあたり合計で60円の値上げを予定。
「輸送費や世界的な燃料費の高騰で、あらゆる食品の価格が上がっていきます。大手では、すでにモスバーガーや丸亀製麺が値上げをしていますが、それ以外の外食チェーンでも、価格に反映してくるでしょう。秋口の10月あたりには値上げが懸念されます」
砂糖は、最大手の三井製糖が3月から出荷価格を1キロあたり5円値上げした。小麦粉も、国が輸入した小麦の業者への販売価格が4月1日から5.5%引き上げ。
「これらを原料とした製品が秋口の段階で値上げされる可能性があります」
あらゆるものの価格が上がるなか、まったく上がる見込みのないものがある。私たちの給料だ。
「4月から上場企業は70歳までの就業が“努力義務”とされました。従業員数が増えても売り上げが変わらないので、賃金だけは下がっていくでしょうね」
私たちに防衛策はないのか?
「もう会社の給与だけに頼れません。奥さんも働いて、夫婦で副業するとか、世帯収入を増やすことです。『平成』は貯金すればなんとかなった“節約時代”でした。会社の給与が上がらないのに物価は上がっていく『令和』は、副業で稼ぐ“増収時代”にしなくては対応できません」
すぐにできる節約は?
「携帯の大手3社が料金プランを値下げしました。ネットでしか申し込めない点でハードルを高く感じる人もいますが、このように自ら動けば安くできる出費もあるので、手間を惜しまずできることはしてください」
「女性自身」2021年4月20日号 掲載