連日、コロナの新規感染者数の爆発的増加が止まらない。引き金となっているのは、変異株がもつ驚異的な感染力だーー。
「菅首相の『人流は減っている』という発言は、現実を無視しているとしか思えません。感染者の増加は止まらず、もはや“オーバーシュート”しているのです」
こう話すのは、埼玉医科大学総合医療センター・総合診療内科・感染症科教授の岡秀昭先生だ。菅首相は7月27日の会見で、新型コロナウイルスの新規感染者のうち「デルタ株」の割合が急速に増加していることを認めつつ、人流は抑えられているとの見解を示した。
ところが、その翌日には東京都内の新規感染者数が第3波のピークを大きく上回る3,177人にのぼり、神奈川県でも初めて1,000人を超えてしまった(1,051人)。全国的に感染者数は急増の傾向にあり、政府は神奈川・千葉・埼玉の首都圏3県と大阪府に再び緊急事態宣言を発出することを決めた。
岡先生によれば、そんな“後手後手”の対応で、日本はすでにオーバーシュート、すなわち感染爆発の状態に突入してしまったのだという。危惧されるのは、重症者のさらなる増加だ。
「今後、入院用の病床が埋まってしまい、自宅待機の人が増えれば、自宅で亡くなるケースが起こることも。死亡率の増加が避けられなくなってしまうのです。ワクチン普及の効果が見え始めているとはいえ、40代、50代では1回目の接種を済ませた人の数もまだまだ少ないのが現状です。この世代の人々にとって、現在の爆発的な感染者数の増加は極めて危険だと言わざるをえません」
いまでは入院する患者のじつに8割が40〜60代だという。
「この世代は特に注意が必要です。20〜30代の若い世代は感染してもほとんど重症化しないのに比べ、40代以上では重症化したり、中等症2の分類であるマスクで酸素を吸うほどの肺炎を発症するなど、つらい思いをする方が目立つためです。40代以上の方には、できることならワクチン接種を受けてほしいというのが医療現場の願いです」
重症化後のリスクと比較すれば、ワクチン接種の副反応のほうが症状は軽くすむ、と岡先生は話す。
「注意してほしいのは、『重症者・死亡者が少なくなっているから心配しなくてよい』という考えは間違いだということです。日本の重症の定義は、海外の基準では『瀕死』にあたります。つまり人工呼吸器やエクモをつけて、現場の医療で、なんとか救命している状態なのです。中年の中等症患者がたくさんいます。今後、さらに感染者や入院者が増えて病床がひっ迫し、新たに入院患者の受け入れできない状況になると、治療を受けられずに死亡することにもなります」
医療現場は、いつ完全に崩壊してもけっしておかしくない状態なのだ。病床のひっ迫を食い止めるためにも、一人ひとりの徹底した感染予防への心がけが欠かせない。