副反応に耐えて2回目接種を終えたばかりなのに、もう3回目接種の議論が始まった。情報が錯綜するなか、打たないとどうなる? から始まる疑問を専門家に聞いたーー。
「(5月の)連休明けすぐに打っていただいた高齢者は、来年の2月になる」
8月31日の記者会見で河野太郎ワクチン担当相(58)は、新型コロナウイルスワクチンの3回目接種について言及した。
3回目接種が議論されている背景には、すでに2回のワクチン接種が済んでいるにもかかわらず感染してしまう“ブレークスルー感染”の増加がある。
世界に先駆けてワクチン接種を進めてきたイスラエルでは5月上旬時点で国民の6割強が2回のワクチン接種を完了していた。しかし、感染力の強いデルタ株のまん延で、6月には1日の新規感染者数が1万人を超える事態に。それを受け、イスラエル政府はすでに3回目の接種を開始している。
今回は、日本でも現実味を帯びてきた3回目接種について、2人の専門家に疑問をぶつけてみた。
【Q1】3回目を打たないとどうなる?
「そもそもワクチンを打つ目的は、体内に侵入してきたウイルスと戦う抗体の量や強さである『抗体価』を上げること。ところが抗体価は接種後3カ月をピークに下がっていくことが明らかになりました。低下した抗体価を再び上げるために、3回目の接種が必要なのです」
そう語るのは、ウイルス学や免疫学が専門の埼玉医科大学の松井政則准教授。とはいえ、せっかく苦労して打ったのに無意味だった……と落ち込む必要はないという。
「日本で打たれている、2回接種が基本となるワクチンは、1回目の接種で抗体を作る火種を作り、それ以降の2、3回目の接種では、この火種に燃料を注ぎ込んで勢いよく抗体を増やすという仕組み。火種があれば感染しても抗体は作られるので、接種後に抗体が減少しても、重症化や死亡のリスクはある程度抑制できます」
ただし、抗体価が高いほうが感染や重症化リスクはより低くなる。
「イスラエルでは人口の2割にあたる約200万人が3回目の接種を終えていますが、2回だけ接種した人に比べて、感染と重症化のリスクが約10分の1に低下したと報告されているのです」