政府分科会の尾身茂会長(72)が理事長を務める地域医療機能推進機構(以下、JCHO)。JCHOとは、全国に57の病院と26の介護老人保健施設などを持つ、厚生労働省が所管の独立行政法人。’20年度には300億円を超える巨額の補助金が投入されている。
「JCHOの財務諸表を見ると、少なくとも230億円以上がコロナ対策関連の補助金とみられます」
そう話すのは、医療ガバナンス研究所の理事長で内科医の上昌広さんだ。上さんは補助金が「適切に使用されなかった」と指摘する。
「’20年度、JCHOに払われた補助金の額は、コロナの影響で前年度の約12倍に増えました。ところが現場スタッフの人件費は、今年度が約187億円と昨年度に比べてわずか2億円程度しか増加していません。つまりコロナ対応の人件費にあてられていないんです」
では、巨額の補助金は、どこに消えたのか。上さんはこう続ける。
「JCHOの医業収入は前年度比で12億円しか増えていないのに対して、補助金収益が198億円も増えました。そして、有価証券の取得に130億円があてられているのです。つまり、もらった補助金の大部分をコロナ対策に使わず、“温存した”と見られても仕方がない。JCHOのトップであり、かつ政府のコロナ対策の指揮を執る尾身さんの役割は、医師や看護師を確保して、自宅放置されているコロナ患者の命を救うことだったはず。JCHOは公的病院なので、民間が患者を受け入れないのとはワケが違う。あきらかな怠慢です」
尾身会長は8月下旬、厚労委員会で「野戦病院を早急に作って対応すべき」などと発言。だが、自分が理事長を務める組織の傘下病院は機能不全に陥っていた。
JCHO労働組合の書記長の大島賢さんは、次のように語る。
「尾身さんも本部も、ただのお飾りで現場のことなんてまったく見ていません。備品の調達すら本部では行わず、各病院に丸投げです。そのせいで、少し前まで医療用手袋さえ切らしていて、台所用のような市販のゴム手袋で患者の対応に当たっていた現場もあったと聞いています」
各地のJCHOで働く医療従事者からは、「サージカルマスクがいつまで1日1枚なのか?」「黒字なんだから、疲弊している全スタッフに慰労金を支給してほしい」などの声が上がっているという。
現場が疲弊している一方、JCHOの経営陣は左うちわのようだ。
「役員報酬の規定」によると、理事長である尾身氏の年俸は2,262万8,000円。そのほかの理事の年俸も1,500万円レベル。JCHO側に、“なぜコロナ患者の受け入れが進まないのか”、“補助金が人件費に使用されていないのはなぜか”と質問状を送ったが、「個別のご質問にはお答えしかねます」という返答だった。
懸念される感染の再拡大に備え、尾身理事長には年俸ぶんのリーダーシップくらいは発揮してほしい。