「新型コロナとの闘いは、新たな段階を迎えますーー」
こう語ったのは、菅義偉前首相。
10月1日に全国19都道府県に発出されていた緊急事態宣言が解除された。
飲食店では全面禁止だった酒類の提供が制限つきで認められ、旅行や長距離移動なども可能な範囲が広がることが予想される。
「11月の紅葉シーズンには、久しぶりに夫婦で旅行したい」
「ずっと我慢していたお友達との“昼カラ”をしたい。もちろんアルコールありで!」
こうした声も聞かれるが、政府の全面解除の決定に関して「拙速ではないか」と危機感を募らせるのは、感染制御に詳しい、高知総合リハビリテーション病院院長の小川恭弘先生だ。
「ここのところ新型コロナウイルスの新規感染者数が減少していたのは、季節的な要因に加え、国民の行動変容、自粛、感染への恐怖心などの表れだと考えています。しかし『全面解除』という言葉は、それ自体がどうしても“気の緩み”を誘発してしまう。年末や年明けといわず、前倒しでの“第6波”襲来も懸念されます」
小川先生は、国民の多くがワクチン接種を完了し、7月に法的規制を全面解除したイギリスのケースを挙げて次のように説明する。
「イギリスでは、9月28日の新規感染者が3万4,520人、これは日本の人口比換算で約6万5,000人。死亡者は167人(同約310人)と、だんだん増えてきています。これを見ると、やはり日本でも、ワクチン接種を済ませた人も適切な感染予防は継続すべきでしょう」(小川先生・以下同)
新型コロナはデルタ株に置き換わりが進み、「エアロゾル感染」がいっそう危険視されるようになった。「飛沫感染」と「エアロゾル感染」の違いは次のとおり。
「くしゃみやせき、唾などによる飛沫は水分を含んでいるため重さがあります。つまり、飛沫感染は、くしゃみやせき、唾などのしぶきを浴びなければ成立しないと考えられます」
ソーシャルディスタンスで「人と2メートル以上離れること」が基準とされているのは、この「飛沫が届く距離」を目安にしているためだ。