「ロシア杯は、2014年の五輪の地、ソチで行われます。羽生選手が初めて五輪で金メダルを獲得した場所です。フィギュア大国であるロシアでも羽生選手の人気は高いので、今回の欠場の発表を残念に思っている現地ファンも多いようです」(スポーツライター)
11月26日から始まるフィギュアスケートのGPシリーズ・ロシア杯。先日のNHK杯に続き、羽生結弦(26)がこのロシア杯も欠場することが17日、発表された。右足関節靭帯損傷の回復が遅れているためだ。この発表に伴って羽生がコメントし、「動きによっては痛みが出てしまいますが、日常生活では、痛みの影響がなくなってきました」とケガの現状を明らかにしている。
「羽生選手のいまの一番の目標は、誰も成功していない4回転アクセルを跳ぶこと。それに、来年2月には北京五輪も控えています。4回転アクセルを跳ぶのには、体に相当な負担がかかるはず。ケガをおして無理して出場しても成功させることは難しいでしょう。ここで無理をする必要はありません。12月には全日本選手権がありますから、そこまでに時間をかけてコンディションを万全に整えてほしいと思います」(フィギュア関係者)
4回転アクセルという大きな目標を叶えるために、当面の試合をあきらめる――。羽生のこの判断が、最近の彼のインタビューの言葉と重なる。CMに出演する「東和薬品」による動画(11月上旬配信)のなかで、羽生は次のように話しているのだ。
《思っているよりも僕は叶った夢ってそんなになくて、たぶんいろんなものを捨ててるんだと思います。やっぱり皆さんの目から見た羽生結弦っていうのは、オリンピックで2連覇してるし、4回転半っていうものにチャレンジしていたり、なんか獲るもの獲っただろうみたいなところがあると思うんですけど、叶っていない夢もいっぱいあって……》
そして叶えたかったことについて、次のように話す。
《もっとゲームも上手くなりたいし、ベースとかギターとかドラムとかやりたいし、本当は野球ももっとやりたかったし、すごいちっちゃいことで言えば、バッティングセンターに行けないなとか、みんなと一緒に遊びたかったな、とかって思った時期もいっぱいあったので、叶っていないものはたくさんあると思うんです》
ただ、そういったものをあきらめてきたからこそ……。
《だけど、叶えるって決めたものに関しては、全部叶ってきたのは、たぶん、それら全部をちゃんと捨てたからかなって思っていて、捨てるっていう、捨てたっていう自分の覚悟、決意みたいなものが、やっぱ一番の原動力で、それを大切にしています》
羽生を4歳から小学校2年生まで指導したフィギュアスケートコーチの山田真実さんは、幼少期を知る立場から本誌に次のように教えてくれた。
「何かを得るためには何かをあきらめなければならないのは一般人でも同じことが言えると思いますが、結弦ともなればその制限は山ほどあるでしょう。私たち一般人が気にもせず普通に生活している日常が日本にいると送れないでしょうし、ケガを防ぐためにスケートに関わらないスポーツは避けてきているでしょうし」
山田さんは羽生が《もっとやりたかった》と話した野球の、キャッチボールをする姿を見たことがあるという。
「結弦が幼いころよくお父さんとキャッチボールしていたときの姿は、どこにでもいる親子のキャッチボール姿でした。野球のことはよくわかりませんが、ちゃんとコントロールされたボールを投げていたように思います。好きなことをやると没頭するタイプですから、キャッチボールも集中して真面目に取り組んでいましたね。お父さんが『スケート選手じゃなければ、野球選手にさせても……。でも本人がスケートを選んだから』と言ってたのを聞いたことがあります」
また、長年、羽生を応援するファンも彼が“あきらめてきた”ことについて次のように話す。
「ファンの間では有名ですが、羽生君は自転車も乗れません。運動神経抜群の羽生君が自転車が乗れないなんてビックリするかと思いますが、本当なんです。車の運転免許も持っていません。ケガをしてしまったりして、スケートに支障が出てしまうようなことはすべて避けてきたんだと思います。大学の研究にしてもスケートのためでしたよね」
多くのものを捨てたからこそ、五輪2連覇という偉業を成し遂げ、前人未踏の4回転アクセル成功に手をかけようとしている今があるのだ。
「すべてをスケートに捧げてきたから、今の羽生君があると思いますし、そんな羽生君だから、多くの人が、みんなが夢中になるんだと思います」(前出・羽生ファン)