6月から、マイナンバーカードとひもづけたキャッシュレス決済で、買い物代金の25%、最大5,000円相当がもらえるマイナポイント事業の第2弾が始まる。
第2弾は先の最大5,000円に加え、銀行口座の登録で7,500円、健康保険証として利用する「マイナ保険証」の登録で7,500円。3つで総額2万円相当のマイナポイントがもらえるとテレビCMも始まったが、いま、マイナ保険証が物議をかもしている。経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。
■普及させたいのに金額増。ちぐはぐな施策に
マイナ保険証はすでに一部の病院で利用が始まっていて、健康診断の結果や投薬履歴などが閲覧可能で、受付時間が短縮できることなどがメリットです。
しかし4月からマイナ保険証を使うと、患者が払う医療費が割高になるデメリットが起きてしまいました。3割負担の方だと初診時に21円、再診時に12円、薬の調剤に9円。マイナ保険証の導入病院で、従来の健康保険証を使う患者も初診で9円上乗せされます。
マイナ保険証は国が進めるデジタル化の一環です。一般にデジタル化は人件費を削減しコストダウンにつながるはずで、わずか21円とはいえ、患者負担が増えるのはおかしい。なぜでしょう。
背景には、病院側の導入の遅れがあります。4月10日時点で導入済みの医療施設は16.5%(厚生労働省)。国は読取り機を無償配布し補助金も出しましたが、システム交換が面倒で高いランニングコストで利益が削られると、導入をためらう病院が多いのです。
そこで4月の診療報酬改定で、マイナ保険証を導入した病院には新たな診療報酬が追加されました。それが3割負担なら初診時に21円などの料金です。結果、マイナ保険証を導入する病院の利益は確保されましたが、費用負担が患者にのしかかることになったのです。
国は’22年度末までに全国民がマイナンバーカードを持つ目標を掲げ、利便性アップの切り札としてマイナ保険証を推進しています。ですが、マイナ保険証を使った方ほど負担が増える。なんともちぐはぐな施策といわざるをえません。
そもそも日本のデジタル度は世界から相当遅れています。スイスのIMD(国際経営開発研究所)の「世界デジタル競争力ランキング2021」によると、アジアでは香港が2位、シンガポールが5位、台湾は8位で、日本は28位。
遅れを取り戻そうとデジタル庁が発足しましたが、初歩的なミスで情報漏洩が続き、最初の大仕事「ワクチンパスポート」はスマホの機種変更にも対応していないお粗末なもの。こんな状況では国に個人情報を預けられない、マイナンバーカードは取得しないと考える方がいても仕方ないでしょう。
マイナンバーカードの交付率は43.3%です(’22年4月1日・総務省)。目標達成には“お金でつる”キャンペーンより、安全で不公平感のないデジタル行政の構築が急務ではないでしょうか。
【PROFILE】
荻原博子
身近な視点からお金について解説してくれる経済ジャーナリスト。著書に『「コツコツ投資」が貯金を食いつぶす』(大和書房)、『50代で決める!最強の「お金」戦略』(NHK出版)などがある